JGFOビジネスセミナー 『会員制スポーツビジネスのマーケティング』

こちらの記事は2020年8月22日に開催された社団法人日本ゴルフフィットネス協会の会員向けオンラインビジネスセミナーの要約です。約80名のトレーナーやゴルフコーチ向けにお話ししたものです。

ゴルフレッスンやパーソナルトレーナーなどの会員制ビジネスの収益モデルにおいて重要な要素は何でしょうか?

もちろん幾つかありますが、真っ先に思い浮かぶことは『お客様がサービスを満足し、継続して利用していただく』ことではないでしょうか?

実際にほとんどの「スポーツクラブ」や「ゴルフレッスン」では『会員制』を導入しています。
これらのサービスが会員制にする理由は大きく3つあります。

1.継続していただくことで効果や利便性が感じやすくなる
2.スイッチングコスト(他社への乗換費用)が上がり、安定収入の確保や、LTV(顧客生涯価値)の向上に貢献する
3.会員との持続的なコミュニケーションやデータの蓄積により、クロスセリングがしやすくなる

多くの会員制ビジネスではこの3つの効果を期待しているはずです。

一方で、CRM(顧客関係管理)ができていないことで、こうした会員制ビジネスのメリットをうまく引き出せない企業やフリーランスの方も多くいます。
今回のセミナーでは顧客関係管理(CRM)というマーケティング手法を知ることで、自社の事業環境に合ったCRMについて考えるきっかけになればと思います。

目次

CRMとは?

CRMとは顧客満足度の向上により、顧客ロイヤルティを高め、売上と収益性の向上を目指すマーケティング手法です。

CRMのゴールはお客様が生涯に渡って自社のサービスを利用するようなファンになっていただくことです。
お客様が生涯に渡ってその企業やサービスにもたらす価値を生涯顧客価値(LTV)と言います。

例えば1回1万円のサービスを、月に1回の頻度で、20年に渡って利用しただけたとしたら、そのお客様が企業にもたらす価値は240万円/1名ということになります。

LTV(240万円) = 単価(1万円) × 頻度(毎月) × 期間(20年)

会員制ビジネスでは特に、この顧客のLTVを高めることで企業の収益性が高まります。

なぜかというと、お客様を獲得するのにも費用がかかっているからです。この顧客を獲得する費用のことをCPA(Cost Per Action)と言います。他にもCAC(Customer Acquisition Cost)やCPO(Cost Per Order)という言い方もあります。

例えば100万円の広告費をかけて、1回1万円のレッスンを無料体験で100人に提供して、実際に50人が入会したとするとCPAは4万円/1名ということになります。

CPA(4万円)=(広告費(100万円) + 体験レッスン(100万円)) ÷ 実際の購入者(50名)

企業活動の基本は、少ない費用で大きな売上を上げることですから、一人一人の顧客との関係を管理することで、CPAを下げてLTVを上げるための活動が必要になります。これがCRMです。

お客様は皆同じではない

お客様は一人ひとり違います。当たり前のことですが、これは性格や嗜好が違うということだけではなく、私たちサービスを提供する側からみた時の重要度も変わります。
“このお客様は重要でこのお客様を重要じゃない”と区別することに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、ホテル、エアライン、金融、百貨店、あらゆるサービス業を見渡してみてください。
お得意様とそうではない方を分けることは企業の都合ではなく、お客様にとっても企業に期待する重要な「付加価値」なのです。

一般的には上位2割のお客様が8割の売上をもたらすと言われています。そして現在サービスを利用している顧客の中で継続して利用してくれるのは3-4割程度と言われています。

一口に自社のお客様と言っても、売上の8割をもたらしてくれる2割の「ロイヤル会員」、売上の2割をもたらしてくれる「一般会員」、これから売上をもたらしてくれる期待の「トライアル会員」、過去に利用してくれていたが今は利用していない「休眠会員」の4つの顧客層が存在していることになります。

収益構造に置き換えてみると、「休眠会員」と「トライアル会員」を減らし、「ロイヤル会員」と「一般会員」を上げることで収益が増えるという構造が見えます。

会員制ビジネスの中でも、ビジター(新規)の集客に力を入れている企業をよく目にしますが、CRMの観点からみると新規の獲得にはコストが発生するため、増やせば増やすほど収益性は悪化します。もちろん創業期などはリピーターがいないのでこれにフォーカスすることが使命となりますが、創業から一定期間がたっている場合には新規の獲得はコスト増を招き収益につながらない場合があります。

お客様ごとにアプローチを変える

冒頭にも書きましたが、「CRMのゴールはお客様が生涯に渡って自社のサービスを利用するようなファンになっていただくこと」です。そのために企業はお客様に選んでいただけるためのアプローチをしていくのですが、そのための顧客のグループ化や、グループごとにどういうコミュニケーションを取っていくのかを管理するのがCRMで具体的に行うことです。

一般的には先ほどのように4つのグループに分けても良いですし、もちろん他の分け方もあります。近年では膨大な顧客データを人工知能を使って共通する消費行動グループに分解する企業も増えています。

CRMの肝は顧客データの管理と活用

CRMのステップはステップ1会員情報の取得、ステップ2会員情報の分析、ステップ3会員情報の活用、の3段階で進めます。

会員情報の取得

ステップ1で取得するデータセットは特に重要で、LTVを計るためには上の図の②、③、④、⑤は必須の情報になります。
可能であれば、次のステップでデータの加工をする必要があるので、手間を省くためにも手書きではなくウェブ上で情報を取得できるような仕組みが理想的です。

会員情報の分析

またステップ2の分析においても、意味のある分析が求められます。
逆に意味のない分析とは何かというと、例えば売上の上位20%をグルーピングする場合に「どの期間の売上の上位20%なのか」を定義しないと意味のないリストになってしまいます。売上実績上位顧客の中にも既に休眠している方が入っている場合があるので、こうしたデータの分析をする場合に使えるデータセットに加工する必要があります。

また分析はグルーピングだけではなく、自社のサービスの品質や販売訴求力を定量化することで、サービス開発にも使えます。例えば一人当たりのLTVの平均推移をみることで、自社のサービスが良くなっているのかを客観的に知ることができたり、リピートの平均頻度を分析することで適切なコミュニケーションのタイミングを計こともできます。

会員情報の活用

例えば休眠会員に毎週メールを送り続けたらどうなるでしょうか?開封率が下がり、迷惑メールに設定されてしまうかもしれません。そうしたら二度とコミュニケーションが取れなくなってしまいます。休眠会員には数ヶ月に一度や、休眠に至った不満を解消するようなニュース(新たなスタッフの加入や、新会場の追加、料金の割引やサービスの追加など)があった場合のみ送るなどの工夫が必要です。その一方で毎週通っていただいているようなロイヤルカスタマーであれば毎週送ってもちゃんと読んでくれます。このグループにはまだ公開していない先行情報を提供したり、スタッフの身内話のようなことでも親密感が増してロイヤリティの向上につながったりします。

このようにCRMとは顧客ごとにコミュニケーションの内容や頻度、方法を変えることで、全ての顧客と良好な関係を継続するための戦略的マーケティング手法なのです。

使えるツール

もちろん顧客とコミュニケーションをとるツールも、何が良いのかを考えて選ぶ必要があります。
例えばSNSなどは即時性が強く、シェアやリアクションを原則とした双方向コミュにケースションツールです。
少人数で運営しているようなスクールが少ないマンパワーで、サービスを提供しながらSNSの即時コミュニケーションに対応できるのか?ということや、顧客の属性(年齢や性別)などから果たしてSNSが適しているのかも検討しなくてはいけません。
認知の獲得には有効かもしれませんし、既存顧客の周辺に同じような属性が存在していると予想される場合(顧客のお友達も顧客になりそうな場合)には有効ですが、ただ闇雲にイイネの人気取りをしても売上や利益には繋がりません。

私の個人的な意見ですが、人的資源が限られているフリーランスの方で、特に対面サービスがキャッシュポイントになっているビジネス(例えばゴルフコーチとかトレーナー)はSNSでCRMは難しいと思います。一方で企業のように広報先任者がいて手数がかけられる方や、フリーランスでもキャッシュポイントが非対面の場合はSNSが効果的に作用します。

ここでは何が正解ということではなく、「期待する効果」と「ツールの特徴」が整合していることが重要なのです。
場合によっては葉書や封書がコミュニケーションツールとして有効な場合もあるので、自社の戦略にあったツールを選ぶようにしましょう。

まとめ

どんなビジネスの手法やフレームワークにも言えることですが、全ては「顧客次第」であり、全ては「あなたの戦略次第」です。
今回紹介したCRMは特にユーザーの情報を活用できる会員制ビジネスには効果が高いので、ぜひ参考にしてみてください。

参考図書

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この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフでライフスタイルやビジネスを豊かにするための活動をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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