月刊ゴルフマネジメント連載#14 フィードバックを実践する

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第14回はのテーマは『フィードバックを実践する』です。

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フィードバックはスキル

7月号から掲載している「フィードバック」についての続編です。7月号では「フィードバックとは何か?」「フィードバックが難しい理由」について説明し、前回の8月号では「フィードバックの種類」として「感謝」「承認」「共感」について説明しました。今回はいよいよどのようにそれを実践するか?ということについて書いてみたいと思います。

まず覚えておきたい大前提としてフィードバックはスキルです。スキルとはギターが弾けることや、英語が話せること、ゴルフができること、プログラミングができること等と同じように、何度も何度も繰り返し実践することで身につく能力です。日常の中で意識的に繰り返すことでスキルアップするので、今回の実践編に沿って練習を積むつもりでやってみてください。

ステップ① 自分へのフィードバック

いざフィードバックを実践しようと思っても、まず何からやったら良いのか分からないという方がほとんどだと思います。

そこでまずは自分へのフィードバックをしてみることから始めてみましょう。具体的には1日の終わりに2,3分で良いので、その日1日の自分の行動を振り返って「頑張ったなー」と思うことを3つ思い出してみましょう。

例えば通勤で「エスカレーターを使わずに階段を使った」とか、「読みかけの本を読み終えた」とか、「文句や愚痴を言いそうになったがぐっと我慢した」とか、そんな日常の些細なことで構いませんから、その自分に対して「階段を使ったあなたはよく頑張った!」「本を読み終えたあなたはエライ!」「愚痴をぐっと我慢したあなたは成長した!」という具合に自分を褒めます。

慣れないうちは気恥ずかしいかもしれませんが、できれば入浴時など一人になれるタイミングでいいので実際に声に出して言ってみてください。

実はこのメソッドには2つの効果があります。一つは「気づく力」を養うことです。私達はいざ誰かを褒めてくださいとか、誰かの長所を言ってみてくださいとか、誰かに感謝をしてください、と言われても咄嗟に出てこないものです。それは普段から人の行動や言葉を注意深く観察するという習慣がないからなのです。

フィードバックをするということは、相手の行動や言葉の変化を見逃さずに反応を示すということですから、「気づく技術」が必要になります。先程の例で言うと「文句も言わずにやってくれてありがとう」というフィードバックを相手にするためには、私達自身が思わず文句を言いそうになる瞬間に気づいている必要があるということです。

ですからこの「気づく技術」を伸ばすためにも自分を褒めるメソッドは有効です。2つ目の効果は「自己効力感(self-efficacy・セルフ・エフィカシー)」が高まるということです。

セルフ・エフィカシーとはスタンフォード大学で心理学教授やアメリカ心理学会会長も務めたアルバート・バンデューラが提唱した概念で「自分の可能性を信じる能力」のことです。セルフ・エフィカシーが高いほど行動までの時間が短くなったり、新しいことに積極的に挑戦したり、失敗や困難を乗り越える力や学習する力が高まると言われています。

コーチ自身が変化や行動や学習に消極的では人材育成はうまくいかないので、自分の効力感(エフィカシー)を高めておく意味でも効果的です。

ステップ② 他者へのフィードバック

次はいよいよ他者に対してコーチングをしていきます。いきなり相手の行動を変えようと思っても難しいので、まずは関係作りからスタートしましょう。

挨拶と声掛け

関係作りは別名ラポール(相互の信頼関係を意味する心理学用語)とも言われますが、前回のコラムでも紹介しましたが、「挨拶をする」「名前で呼ぶ」というのも相手の存在を承認していることを伝える行為ですから、「○○さん、おはよう!」という具合に挨拶と名前を呼ぶ習慣を身に付けるだけでも相互の関係性はぐっと良くなります。

さらに挨拶に「声掛け」を加えれば、相手への共感のきっかけにもなります。
例えば「○○さんおはよう、最近は忙しい?」でも良いですし、「○○さんおつかれさま、寒くなってきたけど風邪引いてない?」という具合です。これも最初は言っている自分に違和感を感じたり、恥ずかしい気持ちになるかもしれませんが、慣れると自然に言えるようになるので、しばらく続けてみましょう。

返事は全て「ありがとう」

3つ目はとにかく「ありがとう」を1回でも多く言う習慣をつけましょう。

コーチのイメージとは少し違うかもしれませんが、前回のコラムでも説明した通り「ありがとう」と言われて悪い気持ちになる人はいませんし、感謝されることをしたいと思うことは人間の社会的な行動本能とも言えます。

例えばメールなどでよく使われる「いつもお世話になっております」という挨拶を、「いつもありがとうございます」に変えるだけでも良いですし、具体的に「すぐに返信をいただきありがとうござます」とか「詳細にお返事頂きありがとうございます」という行動感謝を示すことで、次もこの人にはできるだけ早く返信しよう。できるだけ詳細に報告しよう。という動機を作ることに繋がります。

また何か相手に対してネガティブな指摘をしなくてはいけないときでも「時間をとってくれてありがとう」とか「耳の痛い話だったかもしれないけどちゃんと聞いてくれてありがとう」と付け加えることで否定的なニュアンスを和らげて素直にアドバイスを受け入れてもらうことができるかもしれません。

いずれにしても「ありがとう」という言葉を口癖にすることで、コーチングをしている状態になるので、フィードバックの第一歩として徹底的に「ありがとう」を活用しましょう。

自分と他者へのフィードバックを相互活用

これらのことを実践できたら、あとは毎日これを繰り返します。「今日は名前を呼んで挨拶ができた」「すれ違うスタッフ全員に挨拶と声掛けができた」「部下にありがとう」という具合に実践できたら、それをその日の終わりに振り返って自分を褒めてあげましょう。

もちろんコーチングを頑張っているあなたも誰かに褒めてもらえるならそれが一番良いのですが、今回学んだようにフィードバックというのが訓練によって身につけるスキルなので、人を褒めたり、良い行動に感謝を示すというのは誰にでもできることではないのです。

3回にわたってフィードバックについて書いてきましたが、最後まで読んで実践しようと思っていただいた読者の皆さん、お付き合いいただき本当にありがとうございます。少しでもゴルフ人材の成長につながればと思います。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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