褒めるコーチは良いコーチか? ゴルフ上達に効果的なフィードバックの方法

以前にコーチングの内容を書いた中で、コーチがクライアントを「褒める」という行為が「承認」という認識を生み出すためにクライアントの成長に有効だという話をしました。
では褒めるコーチというのは本当にクライアントにとって有効なのでしょうか?

目次

褒めていれば上達するのか?

そもそも「褒める」という行為がなぜ上達に結びつくと言われるのでしょうか?

これは例えばコーチがクライアントに何かアドバイスをしたことに対して、クライアントがそのアドバイスに取り組んでいる中で、それが良い方向へ変化していることを認める「変化承認」や、クライアントの成果や結果を認める「成果承認」という行為が、モチベーション(動機付け)の継続や、信頼関係の構築に役立つという事実があるからです。
コーチにとって「褒める」というのはコミュニケーションのテクニックであり、コーチにとっての必須技術とも言えます。

一方で、先日の「ゴルフが上達しないのは「人は自分の能力を正確に評価することができない」からです。」というポストの通り褒めるという行為が被評価者の正しい認識を歪めてしまう場合もあります。

褒めることと、間違いを指摘すること、どちらが良いのでしょうか?

フィードバックはポジティブとネガティブの二分法にあらず

褒める(ポジティブフィードバック)の効果については多くの有効性を証明する論分やデータが存在しています。

例えば、三重県のとある自動車教習所では、生徒を“ほめちぎる” というコンセプトを基に人を褒めて伸ばすということを重点においているそうです。卒業生からは「楽しく運転を することが出来た」「褒められることでやる気がでた」「不安だったが落ち着いて運転出来た」などの評価が挙げられています。

被験者に200門の簡単な意思決定の質問をし、“ほめなし”と“ほめあり”の実験を1回ずつ行い、そのパフォーマンスを計測した結果、正解数・解いた問題の数・正解率。いずれにお いても「ほめなし」よりも「ほめあり」のほうがパフォーマ ンスが高くなる結果になりました。(褒めることによる人々の行動の影響より抜粋)というデータもある通り、褒めるという行為はクライアントのパフォーマンスを上げるという面で効果があることがわかっています。

一方で改善点の指摘(ネガティブ・フィードバック)は問題を指摘して、どこをどのように改善したらよいかを言葉で伝えることで、具体的な行動を素早く促すのに有効と言われています。しかしそれは被評価者にとって聞きたくない内容であったり、意欲を低下させる可能性も高いため、ポジティブフィードバック(褒める)に比べると、伝えるのが非常に難しいとも言われています。

実はクライアントがどのようなフィードバックをしてほしいかは、自分自身をどのように評価したいか?という動機によって異なるという研究があり、この中ではフィードバックを受ける姿勢は自己評価における4つの動機が関係すると言われています。

①自己改善動機
自分を変えたいという意識があり、ネガティブなフィードバックこそ受けたいと思っている。
②自己査定動機
自分について客観的にそして的確に知りたいという意識がある。どのようなフィードバックでも正確な情報として知りたいと考える。
③自己高揚動機
自分を高く評価したい。ポジティブなフィードバックは受け容れてもネガティブなものは避けたい。
④自己確証動機
自分はこういう人間だという固まったイメージがあり、自分が思うものと異なるものは受け容れない。

①②の場合であればネガティブなフィードバックが有効と言われていますが、③④であればポジティブなフィードバックが有効と言われています。

多くの研究データでポジティブフィードバックが有効と示されているのは、元来人間というのは耳の痛いことは聞きたくないし、自分を高く評価したいし、自己のイメージを確立させている人が多いということを示している結果とも言えるのかもしれませんね。

コーチに求められる観察力と、クライアントに求められる聞く姿勢

もしコーチであるあなたが、あるいはクライアントであるあなたが、アドバイスの効果を上げたいと思うのであれば、コーチの行動とクラインとの姿勢を整合させる必要があります。

コーチはクライアントをよく観察し、技術だけではなく、モチベーションや性格、改善動機などをしっかりと見定めてアドバイスすることでアドバイスの精度を上げることができます。

一方で、クライアントもコーチにお任せという他者依存を捨て、より精度の高いアドバイスや上達のスピードを求めるのであれば自己改善動機や、自己査定動機を持つことが重要になります。

コーチングとはコーチだけのものではなく、コーチとクライアントの双方向努力によってはじめて身を結ぶものだということを改めて考えてみましょう。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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