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月刊ゴルフマネジメント連載#3 ゴルフ場が定めるべき経営戦略とは?

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』で、経営に関するコラムを連載させていただいております。

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第3回はのテーマは『ゴルフ場が定めるべき経営戦略とは?』です。

月刊ゴルフマネジメントに掲載された記事一覧は下記のリンクからご覧いただけます。

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目次

経営戦略とは?その必要性と戦術や施策との違い

経営戦略とは、組織が長期的に成長するための大枠の計画を指します。具体的には、マーケットにおける自社の競争優位性を確保し、持続可能な成長を達成するための方向性を社内に示すための設計図のようなものです。

似たようなもので「戦術」や「施策」は日々の活動や短期的な目標を達成する具体的な手段であるのに対し、「経営戦略」はこれらを統合し、組織を目標に向かわせる役割を持ちます。

著名な経営学者であるマイケル・ポーターは、経営戦略を「市場競争における立場を選択し、独自の価値を提供するための活動計画」と定義しています。ポーターの『競争の戦略』では、「差別化」や「コストリーダーシップ」「集中」といった競争の基本戦略が具体的に説明されています。

ゴルフ場経営においても、戦略は不可欠で、地域内での差別化を図るための「高級志向」か、コストパフォーマンスを追求した「コストリーダーシップ」運営かといった方向性の選択も経営戦略の代表例として挙げられます。この戦略によって、その後のマーケティング手法やサービス提供、従業員教育の内容も大きく変わります。

戦略策定の基本プロセス

戦略を効果的に策定するためには、以下のプロセスを踏むことが一般的です。

①現状分析

まず、マクロ環境(PEST分析などが有名)や事業環境(5F分析や3C分析などが有名)を整理して、自社の強み・弱み(SWOT分析が有名)を明らかにします。例えば地域で歴史があり、特定の顧客層に強いブランド力を持つ名門ゴルフ場であれば、その暖簾を活かす戦略を模索する必要があります。また、競合他社の動向や、市場トレンドの把握も重要です。

②ビジョンと目標の設定

経営戦略は頻繁に変えられないので、明確なビジョンに基づくべきです。売り上げや利益はもちろん、例えば顧客満足度や従業員満足度、地域や環境への配慮、文化や産業への貢献など具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定します。

③戦略オプションの評価と選択

戦略決定では通常複数の戦略オプションを比較検討し、コストやリスク、実現可能性、模倣困難性、組織整合性、期待される成果などを評価します(VRIO分析が有名)。ここでの決定が、組織の長期的な方向性を左右します。

④実行計画の策定と実施

戦略を現場で実行するための具体的な計画を作成します。従業員への周知や教育、制度やプロセスの整備がこの段階で重要になります。

⑤モニタリングと改善

実行後、戦略の進捗を継続的に評価し、必要に応じて修正を行います。特に成熟産業であるゴルフ場経営では、外部環境の変化に迅速に対応することが求められます。

衰退・成熟するゴルフ場の経営戦略

ゴルフ場に限らず、どんな商品やサービスにも需要の変遷が存在します(PLC=プロダクトライフサイクル)。それはどんな新商品でも時間の経過とともにその新鮮味やブームが低下していくことや、流行する商品やサービスは必ず新規参入が進み競争が加熱していくことで競争優位が低下するという必然からです。ゴルフ場も同じくこの原則を当てはめると、ゴルフ場というサービスはすでに成熟期あるいは衰退期に差し掛かっていると見るのが妥当と言えます。

経営学的な見方をすると、成熟期や衰退期に差し掛かった産業の企業がとるべき戦略は大きく4つと言われています。

①水平拡大戦略

同業他社を吸収・買収することで、規模の経済性や範囲の経済性を活用しながら収益を拡大させる戦略です。銀行や重工業などの古くからあるビジネスが頻繁にM&Aにより統合しているのはこのためです。

②垂直拡大戦略

外注先や仕入れ先を吸収・買収することで、収益率を改善する戦略です。ユニクロやZARAのSPA戦略に代表されるように、製造、卸し、小売などの分業制を一つの企業で付加価値連鎖の上流から下流までを担うことで合理化します。

③ニッチ戦略

ニッチ(niche)は「隙間」を意味し、大企業が狙わない市場を指します。自動車業界では富裕層をターゲットにしたフェラーリ、スマートウォッチではアウトドアやスポーツ愛好家をターゲットにしたGarmin、アパレルでは環境保護への強いコミットメントでロイヤリティを高めるPatagoniaなどがニッチ戦略の実践として有名です。

④需要拡大戦略

拡大する海外市場へ展開します。あまり表立っていませんが、日本のゴルフ場事業者でもハワイやタイなど海外のゴルフ場を経営している会社もあります。

なぜいま経営戦略の見直しが必要なのか?ゴルフ場のような成熟産業に求められる経営戦略の見直し

日本のゴルフ場産業は、前述したようにプロダクトライフサイクルの成熟期あるいは衰退期に差し掛かっており、戦略の見直しが不可欠であるという事実に加えて、人口減少や高齢化による、競争の激化や、人手不足といった課題に直面しています。このような産業では従来の戦術(例えば足元の費用改善活動やレベニューマーケティング)を繰り返すだけでは成長に限界がきています。

またこうした社会動向に加えて、環境意識の高まり、テクノロジーの進化に伴い、新たな価値創出が企業に求められている近年では、環境に配慮した運営方法やデジタル化を活用した予約システムの導入は必須と言えます。

経営学者クレイトン・クリステンセンが提唱する「イノベーションのジレンマ」によれば、過去に成功した企業は「現状維持」を選びがちで、それが新興競合に打ち負かされる原因となるというのは、経営学を学んだ者の常識となっています。ゴルフ場経営者の皆さんも、この罠に陥らないために、時代に合わせて経営戦略を刷新し、変革を恐れず、未来に挑戦し続ける必要があります。

まとめ

経営戦略は単なる計画ではなく、ゴルフ場が持続可能な競争優位を築くための羅針盤です。今回ご紹介した理論や事例を参考に、自社の経営戦略を改めて見直し、変化する市場環境に対応していきましょう。これからのゴルフ場経営を担う皆様が、科学的根拠に基づいた合理的な判断を行い、業界全体の発展に寄与されることを願っています。

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この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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