月刊ゴルフマネジメント連載#25 組織内の社会的ジレンマを解消するコーチングが現代にこそ必要な理由

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第24回はのテーマは『対立を活かす。コンフリクト・マネジメント』です。

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皆さんの組織には「なんでこの人はこんなに自分勝手なんだろう」「なんでこのひとはこんなに非協力的なんだろう」と思う場面はないでしょうか?

「社会的ジレンマ」とは、社会(組織)のなかで個人が協力的になるか、非協力的(利己的)になるかを選択できる状況で、個人にとって都合の良い選択をすると、集団にとって都合の悪い結果となってしまう葛藤です。

目次

私の利益と、みんなの利益

例えばあなたがある仕事を頼まれたとして、その仕事をやることであなたは残業しなくてはいけなかったり、あるいは新たな責任やストレスを受けてしまう可能性があるとします。しかしあなたがその仕事をやることで同僚や顧客といったあなたが属する集団社会の幸福度が上がる。こうしたケースは企業活動においては日常的に起こっていることではないでしょうか?

あなたがその仕事を受け入れなければ、顧客満足度が低下したり、他の人がその仕事を担うことになり従業員満足が低下したり、それがやがて会社の不利益になり、その企業は競争力を失ってしまうかもしれません。

一方であなたがその仕事を引き受けることはあなた自身の幸福度を下げることになるかもしれません。

冒頭に書いた自分勝手、非協力的、という人は、「みんなの利益」よりも「私の利益」を優先した結果なのです。

特に最近よく聞くのは「若い人は残業しない」「若い人は大変な仕事をやりたがらない」という声です。

現代に起こりやすい利己主義

特に近年の日本の中小企業、その中でもゴルフ場のような産業の成熟期を終えて低迷期を迎えている斜陽産業においては、「みんなの利益」が個人に還元されにくくなります。例えば日本の高度成長期では約20年にわたり2桁成長率が続きました。企業の売上が増えるということは、当然生産が増えますから、部署や従業員が増えて、それに伴い新たな管理職や上長が増えていきます。こうした企業の売上や利益も増えていく成長下では、「みんなの利益」に貢献した人には新たな役職や報酬が与えられます。これはすなわち「みんなの利益」=「私の利益」として還元されているという状態です。『24時間働けますか?』はまさに企業戦士と言われた高度成長期の象徴的なキャッチフレーズなのではないでしょうか?

一方で産業が衰退、低迷している状態においては、利益もポストも増えていきませんから、「みんなの利益」に貢献しても「私の利益」として還元されにくくなります。もちろん人事評価制度などで一定の評価がされたとしても、特に日本では一度上げた賃金を下げることや解雇が難しいという労働者保護のルールもありますから、大胆にその成果を高く評価することができませんし、新たな部門が増えないかぎり誰かが辞めるか、降格させないと出世もできないという状況です。雇用流動性が低い(雇用者の平均勤続年数は、日本12.1年、アメリカ4.2年、フランス11.2年、ドイツ10.5年、デンマーク7.2年)日本では特にその傾向は強いと思います。

これは私の持論ですが、たった数十年で人間のメンタリティはそんなに大きく変化することはありませんし、昔の20代に備わっていて、今の20代に備わっていない能力や機能など存在するはずもありません。

現代において企業の中に利己的な人や、個人主義の人が増えている、チームワークが悪いと感じるのはある意味で自然なことであり、個人の性格の問題以前に、「みんなの利益」に貢献しても「私の利益」に還元されないという、職場への期待の低下や失望感が原因だと感じます。

内発的動機を作り出すコーチングの重要性

では、そんな時代だから、そんな産業だからと、私達はただただその環境に嘆き、諦めて、人生という有限な時間を過ごしていくだけでいいのでしょうか?

ポストや報酬というニンジンによって行動を促すことをモチベーション理論では「外発的動機づけ」と言います。一方で名誉や報酬に関係なく、仕事のやりがいや、自己成長、人的関係性など、内なる好奇心や喜びを原動力として行動を起こすことを内発的動機づけと言い、コーチングはまさに内発的動機づけをベースにした能力開発手動です。

報酬やポストといった外発的動機づけとなる原資が乏しい現代だからこそ、こうした内発的動機づけによって現状を打破しようという声が大きくなっているのではないでしょうか。

非協力的メンバーへのコーチング

組織内における非協力的メンバーは「モンスター社員」などとも揶揄されますが、こうしたメンバーのほとんどは「自己防衛本能」が強く働いているケースです。

一人だけ仕事をしない、負担を避けている社員がいると他のメンバーの負担が増えて、それが不公平感となり士気を低下させます。

こうしたお客様や他の社員よりも自分の都合を優先してしまうメンバーは、挑戦心や向上心も低く現状維持バイアス(※)が強い傾向があります。

※現状維持バイアス
たとえ有益であったとしても、知らないものや経験したことのないものを受け入れることに心理的な抵抗が生じ、現在の安定した状況が失われると感じて、損士気回避傾向によって態度を固執してしまう傾向。

こうした防衛本能により”変化を妨げる力”は個人だけではなく、組織全体にも働いており、組織は常に今と同じ方向に動こうとします(組織の慣性)から、リーダーであるコーチは常に期待する行動の背景にある目的や意図を説明することや、組織の利益、将来回避できるリスク、数字やデータを使って理解を促すなどののコミュニケーションを積極的にとっていく必要があります。

また行動に対してどんな不安があるのか、反対意見(やらない理由)を聞くことはもちろん、そうした思考、行動、態度をとっている自分に対してどんな気持ちや感情を持っているか?などを確認してみるのもコーチングです。

保守的な自分、非協力的な自分でいたいという人は元来は少なく、周囲と協調して成長するように行動したいと思っていても、防衛本能や現状維持バイアスからそうした行動が取れないというケースが多いので、そのことに気づいてもらうというのがコーチングの手法です。

もちろん中には物理的な理由(たとえば育児や介護で残業ができなかったり、精神的余裕がない)で協力できないケースや、能力的な不安(その任を担って失敗したりうまくいかなかったら恥ずかしい)などの内面的課題を抱えているケースもあるので、こうした課題を一緒に解決していくという姿勢を示すことができれば、メンバーとの信頼関係もより深まって、組織としての凝集性も高まっていきます。

この記事のタイトルの通り、私達は誰もがジレンマを抱えて生きています。

ぜひ皆さんの職場でも「私の利益」と「みんなの利益」について話し合ってみてください。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、コーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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