月刊ゴルフマネジメント連載#27 コーチング型人材育成の6ステップ

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第27回はのテーマは『コーチング型人材育成の6ステップ』です。

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これまで26回にわたって人材育成についてのコラムを書いてきました。中には技術的なものもあれば、情緒的なもの、さらには概念的なものまで、様々な角度から人の成長に焦点をあててきましたが、それらは全て科学的な論文や本の内容をお伝えするものでした。今回は趣向を変えて、私自身が実際に日々の仕事の中で意識して実践している人材育成の方法について書いてみたいと思います。これまで紹介してきたような著名な学者や成功者が語っているものと少し違いますが、ケーススタディとして参考になればと思います。

目次

人材育成6つの「させる」ステップ

これまで紹介してきているようにコーチングとはティーチング(教える)やインストラクション(指示する)と違って、メンバーが自ら成長に向けた行動を取るように促すコミュニケーションのことを言います。

ですから指導者であるコーチが何かを「する」のではなく、相手に「させる」というのがポイントになります。そして相手が「しよう」と思うための動機づけを対話によって引き出すというのがコーチングのポイントです。

目標と課題を話させる

「理想はどういう状態で、今はどういう状態?」「それは何が原因だと思う?」という質問です。最初のステップはこのように目標と課題を話してもらいます。自分の理想や目標、そして現状について話してもらい、なぜそうなっているのか?という課題を聞き出します。この時に他責思考になってしまう(上司が悪い、会社が悪い、社会が悪い)人には、「相手が変わるまで何もしないで待つ?」「相手が変わったらその時に自分の行動も変わる?」という質問をします。

話してくれた課題が的を得ていなくてもそれを指摘したり修正したりせず、本人が課題だと思うことを肯定します。私達のゴールは利益の達成だけではなく、人が成長することですから、例え事業に大きな影響を与えない課題であっても、その人が成長のきっかけになることを優先します。コーチの傾聴力が問われるステップです。

解決法を話させる

「どうやったら解決できると思う?」「その原因を取り除くには何をすればいいんだろう?」。もちろんこの解決方法も的を得ない返答が返ってくることもありますが、それも否定せずに、「例えば○○だったらどう?」「こういうやり方をした会社(人)もあったみたいだけど?」とヒントを出してあげましょう。ここはコーチの知識の広さや深さ、過去の実務経験などの知見が問われるステップです。

決断させる

「いつまでにやれそう?」「次の会までに取り組めそう?」「何か必要なサポートはある?」と実行に移すための決断に向けた質問をします。もし「今は忙しいから…」や「自信がない」などの決意が固まらない返答だった場合は一旦それを受け入れて、1の理想や目標に戻ります。この「やる」と決断するステップは徐々に醸成させていくので焦らずに1〜3を行ったり来たりします。人によって個人差がありますが「時間をかけてじっくりとやる」というマインドセットで望みましょう。成長のスピードはみんな一緒ということはありませんし、成長は周囲の期待ではなく本人の意思があってはじめて実現できるものです。何度も話し合うこともありますが、コーチの胆力が求められるステップです。

失敗させる

失敗を奨励するという意味ではなく、失敗する権利を与える、もう少し具体的に言うと失敗しそうになっても見守るという姿勢です。人は失敗から学び成長します。失敗したら、なぜ失敗したのかを考える機会を得ることになります。それこそが成長の最も大きな要素です。そして失敗を確認したらまずは失敗を讃えてあげましょう。止まっているよりも、走り出して怪我をすること、怪我を怖がらない勇気を与えるのがコーチの仕事です。コーチの包容力が求められるステップです。

再挑戦させる

失敗、あるいは課題解決が停滞してからが本番です。特に現代の仕事ではそんなに簡単に成功が実感できるような仕事は残念ながらありません。特にはじめて取り組むことであればそのほとんどは最初失敗します。しかしその失敗で終わってしまっては、成長もできないし、自信も得られません。このステップは勇気づけ(Encouragement = エンカレッジメント)と言われますが、挑戦するためのエネルギーを与えるフェーズです。「心の感情タンクを満たす = fulfill emotional tank」とも言われますが、失敗したという事実よりも、それに挑戦したこと、やろうと決断できたこと、など出来たことに意識を向けることがポイントになります。褒めると混同されがちですが、褒めるは結果は行為に対するレビューに対して、エンカレッジメントは存在そのものへの肯定がポイントになります。

コーチのリスペクト(尊敬)や、楽観思考や未来志向が求められるフェーズです。

振り返らせる

最終結果が成功したとしても、失敗したとしても、できるだけ早く振り返りの機会を持ちましょう。

振り返りのフレームワークはいくつかありますが、最もよく使われるのは「KPT = Keep(良かったこと、続けたいこと)、Problem(問題、うまくいかなかったこと)、Try(次にやってみたいこと、Pに対する解決策)」や、「YWT = Y(やったこと、できたころ)、W(分かったこと)、T(次にやること、続けること)」というフレームワークです。ここでもコーチの感想は入れずに本人のコメントを肯定し、最後に「よく頑張った」と褒めてあげます。

大切なのは言葉にさせること

一連の流れで最も大切なことは「言葉にさせる」ということです。

考えや感情、行為を言葉にするというのは私達の行動に無意識に影響を与えると言われています(プライミング効果)。また一見すると愚痴と思われそうなネガティブな不安や不満も、それを言語化することで苦痛やストレスが緩和され、安心感を得られるという効果もあります(カタルシス効果)。これらの法則が機能するという前提にたつと、ステップ1のように理想や目標を語れば、自分の思考や感情に客観的に気づくきっかけになって、持ち場に戻った後の意識や行動を変化させていくかもしれませんし、コーチであるあなたに組織の課題を話すことで信頼や安心を感じるようになるかもしれません。

確かに対話というのは時間がかかりますし、聞き手である私達も人間ですから、面倒だと感じるときもありますが、人の成長というのはそれだけ手間と時間がかかるものなのです。

私もまだまだ出来ない場面も多いですが、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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