ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』で、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。
第37回はのテーマは『職場の人間関係が及ぼす影響と改善策』です。
月刊ゴルフマネジメントに掲載された記事一覧は下記のリンクからご覧いただけます。
皆さんの職場の人間関係は良好と言えるでしょうか?
総務省が発表しているデータによると離職原因で最も多い理由は「職場の人間関係」であると言われています。
またホーソン実験(後述)でも、職場の人間関係が生産性に影響を与えることが証明されています。
このように職場の人間関係は人手不足の解消や、顧客満足度や利益に影響を与えるにもかかわらず、改善が出来ないと悩んでいるマネージャーも多いのではないでしょうか?
職場の人間関係が悪化する主な原因
職場の人間関係は日々の業務の中で感じる様々な要因が影響して、徐々に悪くなっていくケースが多いです。人間関係が悪化する原因として以下のものが挙げられます。
不適切なコミュニケーション
非効率または不十分なコミュニケーションは誤解や摩擦を引き起こし、人間関係を悪化させる可能性があります。代表的なものとして「私は聞いていない」「上司によって言って指示の内容が違う」「業務の目的(ゴール)が伝わっていない」などです。特に情報を聞かされていないという状況は、メンバーの自己肯定感を下げるだけではなく、組織への帰属意識も低下させるため、この人(部署)には関係ないと思う情報でも、秘匿性が高いものでなれけばできるだけ共有しておくことが重要です。
不公平な扱い
メンバーが公平に扱われていないという場合、悪感情や不満を生み出し、人間関係を悪化させる可能性があります。不公平を感じる理由として「評価(配置や報酬)の不公平性」「仕事の時間や強度の不公平性」の2つが代表的なものとして挙げられます。具体的なものとして「あの人の仕事はラクそうなのに私はいつも忙しい」「あの人の代わりはいるけど私には代わりがいないので休みや残業の自由度がない」などで、そうした業務負荷が報酬や配置に正当に反映されていないと感じる問題です。
この2つの他にも、「明確な役割の欠如」や「利害の対立」などが職場の人間関係を悪化させる原因がありますが、多くの職場で起こっている不協和は「不適切なコミュニケーション」と「不公平な扱い」の2点が主な原因になっていると言われています。
職場の人間関係悪化が引き起こす様々な問題
こうした人間関係の悪化は以下のような様々な問題を引き起こすと言われています。
生産性の低下
スタッフ間の対立や不協和は、作業の効率を阻害し、生産性を低下させます。スタッフ同士の関係性が悪くなることでコミュニケーションの質や量が低下し、特にゴルフ場のようなサービス業では業務オペレーションや顧客情報が正しく共有されず、それが顧客満足度の低下や、会社の評判、売上や利益などに影響を及ぼす可能性があります。
離職率の上昇
冒頭にも書いた通り、離職理由で最も多いのは職場の人間関係です。不和な環境はスタッフの士気を下げるだけでなく離職率を高める可能性があります。厚生労働省が実施している「雇用動向調査」によると特にサービス業の離職率は全産業の中でも最も高く、離職理由でも職場の人間関係を離職する人が38%と約4割にも上ることから、人手不足問題をかかえるゴルフ産業にとって、職場の人間関係は頭の痛い問題といえます。
精神衛生の低下
また厚生労働省による労働安全衛生調査によると、職場でのストレスを感じる原因の25.7%は人間関係によるもので、職場で4人に1人はこの問題に悩んでいることが分かります。こうしたストレスは士気や生産性に与える影響だけではなく、精神疾患などのメンタルヘルスなどへの影響も見過ごせません。
学習機会や成長機会の喪失
良好な人間関係によって得られるものの一つに、建設的なフィードバックがあります。お互いの関係性がよければ、業務を改善するために有効な意見や指摘、優れたアイディアを共有するをすることで、職場の革新性を向上させたり、個人を成長させることができますが、人間関係に配慮するあまりにフィードバックや発言の場や機会が失われるケースがあります。
職場の人間関係をよくするために
人間関係の悪化がもたらす組織への悪影響や、その原因がわかったところで、改善するためのいくつかの方法を知っておきましょう。
ビジョンの浸透
組織では部署や個人によって役割や期待される成果は違いますし、その部署や個人が担う責任も異なりますから、労働条件を完璧に平等にすることは非現実的といえます。ですが一人一人の役割や責任が違っていても組織のゴールは一つですから、そのゴールの達成のためにそれぞれに異なる役割が与えられているという前提を共有するリーダーシップは重要です。
適切なコミュニケーションチャネルの使用
全てのコミュニケーションを直接的な対話によってしていたら、マネージャーはかなりの時間と労力をそれに消費することになってしまいます。メール、チャット、ビデオ会議、などのデジタルツールを適切に使うことで、コミュニケーションの効率を高める工夫をしていきましょう。心理学ではザイオンス効果(単純接触効果)により、「コミュニケーションは質よりも量が大切」であることや、「コミュニケーションシグナルを送り合うことで関係性が向上する」という科学的なエビデンスも存在していますから、一度の対面での対話よりも、デジタルを通じた頻繁な情報交換の方が人間関係の向上に効果が高いことがわかっています。
情報の共有化
できるだけ情報は統一されたものを、広い範囲に共有しましょう。もちろん財務や人事などの秘匿性の高い情報をオープンにする必要はありませんが、部署や役職ごとに違う情報を流したり、あるいは一部の情報を「あの部署に関係ない」という判断で共有しないことは不公平感を上昇させ、帰属意識を低下させる原因になります。また部署によっては専用のメールアドレスやデバイスが支給されていないケースもがある場合、「分からないことがあればいつでも声をかけて欲しい」という「オープンドアポリシー」を頻繁に表明することも有効で、「情報はいつでも均等に与えられる」という態度を示すことも重要です。
定期的な情報交換
会議やミーティングは通常、明確な議題や目的のもとに行われますが、それとは別に定期的な対話の場を設けることも人間関係改善に有効な施策です。特に何もなければ数分で終わっても構わないので、メンバーは「私が聞きたいことを聞いたり、持っているアイデアや意見について、いつでも話せる場がある」と認識することで、コミュニケーションの機会が平等に与えられていることを認識できます。
組織の良好な人間関係はマネージャーの努力の賜物
人間関係というと意図せずに良くなったり悪くなったりする制御不能なイメージがあるかもしれませんが、ビジネスの世界では職場の人間関係はマネージャーによって意図的に制御されるものと定義されます。それは職場の人間関係が売上、利益、顧客満足度、離職率、生産性、などのビジネスの革新部分に大きく影響を与えることが判明している以上、その管理をすることが管理職の仕事であると定義されるからです。ぜひ皆さんの職場でも実践してみてください。