ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』で、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。
第51回はのテーマは『リーダーシップ行動理論から学ぶリーダーの条件とは?』です。
月刊ゴルフマネジメントに掲載された記事一覧は下記のリンクからご覧いただけます。
企業活動はもちろん、スポーツや地域活動、あるいは政治など、あらゆるコミュニティ活動において重要とされているのがリーダーシップです。
リーダーシップが発揮されている状態と、そうではない状態とでは、成果はもちろん、そのコミュニティの雰囲気や文化にも大きな影響を与えます。
リーダーシップ理論とは、多くの学術研究者がリーダーシップについて研究し、実際にある程度まで体系化されたものを言いますが、これを学ぶことは近年の管理職や経営者にとっては必須と言われています。
リーダーシップ論の構成
一言でリーダーシップと言っても、それが構成される要素はいくつかあり、その要素ごとに研究や能力開発をするというアプローチが一般的です。
リーダーシップ特性論
特性論とはリーダーシップを発揮している人の特性すなわち優秀なリーダーの性格や属性(共通している性質や特徴)に焦点を当てた理論です。
これは性格診断や「ストレングス・ファインダー」などの特性検査などで判断されることがあります。
リーダーシップ行動論
行動論は優秀なリーダーに共通する「行動」を特定し、その行動を積極的に取ることでリーダーシップ開発をしていくという理論です。
有名もので言うと、「人間への関心度」と「業務への関心度」という2軸に分けたマネジメントスタイルを評価する「マネジリアルグリッド論」や、「目標達成のP=パフォーマンス」と「集団維持のM=メンテナンス」の強弱を分類する「PM理論」などが代表的なものになります。
これらの理論では、仕事と人間関係の両方にリソースを割ける人物がリーダーに相応しいと評価されています。
コンティンジェンシー論
コンティンジェンシー(contingency)」とは「偶然」という意味を含みますが、リーダーは状況の変化に合わせて、組織の管理方針を適応させていくべきとするリーダーシップ論で、 「リーダーシップ条件適応理論」という呼び名もある通り、状況に応じたリーダーシップを取れる人、すなわち柔軟で変化を厭わない人がリーダーに相応しいとすする考え方です。
数多のリーダーシップ理論
このほかにも世の中には数多のリーダーシップ理論が存在していますが、上記に紹介したものは古典的リーダーシップ理論と言われているもので、現代のリーダーシップ理論の基礎になったもと言われています。
一方で最近では「リーダーの目標は奉仕することである」というリーダーシップ哲学に基づく「サーバント・リーダーシップ」や、世界的な名著と言われる「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」の中で、リーダーシップを発揮するために必要なステップを5つにまとめた「五段階リーダーシップ」、自身の理念や倫理観などを強烈に体現することで組織を束ねる「オーセンティック・リーダーシップ」などが注目されています。
リーダーシップ理論は時代と共に変わる
これらからわかることはリーダーに求められる資質や行動は時代や社会的な背景によって常に変化してきたと言うことです。
特に近年はVUCAの時代とも呼ばれ、予測不可能な時代となっていることや、資本主義についての懐疑的な見方が広がり、ESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治)を考慮した事業活動が求められるようになってきている背景から、「競争に勝てるリーダー」よりも、社会的視野をもった「共生型のリーダー」が求められていると言えます。実際に私の周りの若い経営者にも自分や自社の利益よりも、社会的利益を追求するリーダーが増えてきていると感じます。
リーダーシップの条件
前述してきたようにリーダーシップとは時代と共にその定義が変わりますし、業界や業態や文化によっても求められるものが変わってきますから、一概に「これが優れたリーダーです」とは定義がしにくいですが、数々のリーダーシップ理論の中で共通しているものをまとめると下記のようなものになります。
哲学がある
哲学者アリストテレスの時代から、人が動くには「論理」「倫理」「情熱」が必要だと言われているのは、それが人類の普遍的な事実だからです。
決断力や行動力がある
リーダーが決断を求められるシーンというのは、判断が難しい場面です。
結末を左右する重要な局面だからこそ、リーダーとして判断を任せられているわけですから、それを回避するのは論外ですし、決断力こそがリーダーとしての役目を果たすtめの必須要件と言えます。
統率力がある
組織というのは色々な考えや価値観を持った人が一つのコミュニティで働きますから、目標を達成するためにはそんな多様な他者やチームとしてまとめる力が必要です。
洞察力がある
洞察力とは、物事の本質や背景を見抜く力を言いますが、問題の本質や発言の裏にある意図を見抜く力とも言えます。優れたリーダーは言葉だけではなく、現地現物を徹底し、必ず自分の目で見て判断します。
誠実さがある
リーダーがメンバーに対して常に誠実でいることは、信頼を得、良好な人間関係を構築することにつながります。誠実さを構成する要素としては「素直で嘘をつかない」「約束を守る」「言葉と行動が一致している」「自分の務めを果たす」などが重要と言われています。
育成能力がある
メンバー個々のスキルを把握し適切なタスクを割り振り成長を促すことや、傾聴を通じたコーチング能力も必要とされています。
耐久力(レジリエンス)がある
リーダーには困難や失敗から立ち直るスキルも求められます。逆境に耐え抜き、迅速に回復し、その経験を通じてさらに成長するレジリエンスは近年のリーダーシップでは特に重要視されています。
おそらく読者である皆さんの中にも、優秀なリーダーになるために日頃から自己研鑽に励んでいる方も多いと思います。リーダーシップ理論は部下育成だけではなく、そんなリーダーの皆さんの内省や自己評価にも活用できるので、ぜひご自身の行動や特性とも照らし合わせてみてください。