日本のゴルフ場は人材の高齢化、そして採用不足のいわゆる「人材難」という経営課題に面しています。
ゴルフ場が人材難に陥る理由
ゴルフ場が人材難に陥る理由は
・僻地採用という地理的なハンディキャップ
・低収益且つ労働集約型で給料は安く、非成長産業で将来性が見込めない
・IT・マーケティングといった時代の潮流にあったスキルが身につかないから転職にも不利
などが挙げられます。
そんな人材に悩むゴルフ場だからこそ、重視するべきなのが「トータル・リワード」や「非金銭的報酬」と言われる考え方です。
トータル・リワードとは?
「トータル・リワード」(Total Reward)とは、従業員に対する報酬(=リワード)を総合的な動機づけのしくみと捉える考え方で、金銭的報酬と非金銭的報酬をバランスよく包括した報酬マネジメント体系を指します。
一般的に金銭的報酬は2つに分類され、直接的な給与や賞与といったものと、間接的な福利厚生、休暇、退職金などからなります。
一方で非金銭的報酬も2つに分類され、仕事から得られる報酬として、やりがい、面白み、社会的意義、自己成長といったものと、組織から得られるビジョンへの共感、メンバーのユニークさ、対人関係や職場環境、組織文化やコミュニティなどが含まれます。
創業から間もないベンチャー企業に優秀な人が集まるのは、給与や福利厚生という金銭的報酬よりも、時代を変えるというメッセージや、大きな社会課題の解决というビジョンへの共感や、優秀な経営者と近い距離で働けることや、若くても権限を与えられることで成長できるという事があるからです。
その他にも新興企業がオフィスをオシャレで居心地よくしたり、社内勉強会などの成長やコミュニティを育む機会を支援したり、成長や肯定感を高めるための1 on 1コーチングなどを実施するのも、こうした非金銭的報酬を上げるためなのです。
働く理由、辞める理由
実際に内閣府の「働く目的」の調査によると「お金のために働く」と回答している人は51%で、残りの約半数の人がお金ではなく「務めを果たしたい」「生きがいを見つけたい」と回答。さらに理想的な仕事については約6割が「自分にとって楽しい仕事」と回答し、他にも「専門知識や能力が活かせる仕事」が次いでいます。
一方で離職理由で上位を占めるのは、「人間関係が悪かった」「やりがいがなかった」「労働環境が悪い」「自分の能力が活かせなかった」というのが大半で、転職によって給与が増える人は半数以下というデータからもわかるように、実は離職理由として賃金への不満を挙げる人は少ないことが分かっています。
このことからも企業の人事(特にゴルフ場)においては、お金ではなく、地域や社会への貢献感、自己肯定感、適正のある仕事へのアサインや、仕事を通じた成長実感の提供といった、お金以外の報酬がいかに重要であるかがわかります。(賃金が重要ではないという意味ではなく、賃金以外も大事という意味)
特に今のこの時代に「ゴルフ場で働こう」という人材は、よほどのゴルフ好きか、たまたま家が近いなどといった環境要因、あるいは特にゴルフにも仕事にも興味はないが他が決まっていないからという腰掛け目的の3通りくらいだと予測できます。
高い給与を求めてゴルフ場に入ってくる人はいないので、ゴルフ場が採用や離職防止において最も考えるべきことは、賃金の額ではなく「やりがい」や「職場環境」といった非金銭的報酬をどのように高めるか?という事の方が実ははるかに重要なのです。
非金銭的報酬とエンゲージメントの関係
エンゲージメントとは、仕事に対してのポジティブで充実した心理状態のことで、非金銭的報酬はこのエンゲージメントを高めることによって、従業員のモチベーションを高め、「営業利益率」「労働生産性」「離職率」に対してポジティブな影響を与えることが、様々な研究機関によって証明されています。
非金銭的報酬を高める具体的な取り組み
この記事を見て非金銭的報酬を高めたいと思ったマネジメントや経営層の方は以下のアクションをおすすめします。
・月1回、2ヶ月に1回程度の1 on 1の実施
・定期的な社内研修や勉強会の実施
・定期的なカジュアルな親睦会の実施
・地域貢献や社会貢献を掲げたビジョンの浸透
これらのアクションはコストも手間もかかりますが、離職に伴う採用や人材育成にかかるコストや、ゴルフ場であればキャディ不足による機会損失額と比較すれば、かなり少ない投資とも考えることができます。