月刊ゴルフマネジメント連載#47 リーダーなら知っておきたい報酬の仕組み

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』で、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第47回はのテーマは『リーダーなら知っておきたい報酬の仕組み』です。

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経営者やマネジメント層なら、人事制度の中でも特に「報酬」について悩まれる方は多いのではないでしょうか?

報酬が高すぎると会社の利益を圧迫してしまい倒産などのリスクが高まりますし、逆に安すぎても従業員の生活やモチベーションを維持することはできません。今回はみなさんが気になる、給料や報酬のお話です。

目次

資本主義における従業員報酬の定義とは?

資本主義経済における従業員報酬は、単に給料や賃金という形での対価を指すのではなく、より広く深い意味合いを持ちます。
資本主義経済の基本原則は「資本家による労働力の購入」と「労働の再生産」にあります。

企業は労働者の労働力を市場における適正な価値で購入し、その対価として労働者に賃金を支払います。労働者はこの賃金を使って、その労働力を再生産(維持・向上させるための食事、住居、教育、子育てなどの日常的な生活)します。

また、労働者が生み出す価値がその賃金を超えた部分、すなわち「余剰価値=利益」は企業の利益となり、株主など資本家への富の分配に大きく影響を与えます。

一見すると資本家は労働をせずに富を得てズルいように見えますが、事業のリスクに見合ったリターンがないと資本家は自分のお金を投資してまで事業をやるメリットがないため、こうしたリスク&リワードの関係性も資本主義の持続的サイクルを根底を支えている原則といえます。

このプロセスは、経済全体の富の流れを形作り、社会の階層構造や経済成長の推進力となるのです。

労働力の市場価値

賃金の決定要因となる労働力の市場価値は、一般的にその労働に投下される「時間」「強度」「希少性」が考慮されると言われています。労働時間に比例して賃金が上がるだけではなく、そのスキルや資格を身につけるために投下される時間が長いものも給与が高くなります。また心身への強度が高い仕事、スキルや専門性が高い仕事、社会需要と相対的に供給が少ない仕事は必然的には通常高い報酬が支払われます。

また近年では仕事の複雑性が高まっているため、一つの特化したスキルではなく、スキルセット人材(一人で複数の高度な専門的技術や知識を複数持ち合わせる)の需要が高まっています。例えば営業スキル+英会話や、経営スキル+プログラミングという具合に複数のスキルが組み合わさることで、その希少性が高まることが理由です。

また社会変化が早い現代では、「スキルの陳腐化」は4-5年周期で起こると言われていますから、労働市場で価値を出す人材であり続けるには5年ごとに「学び直し」が必要ということになります。

こうした賃金の決まり方のルールを知ることは、経営層に役立つだけではなく、従業員が自身の市場労働価値を上げるためにも役立ちますから、企業の育成方針にも反映させることができます。

報酬の種類

従業員に対する報酬の種類は多岐にわたります。報酬の基盤となる「給与」は、労働の対価として定期的に支払われる金銭で、さらに、労働条件や生活環境に応じた「手当」が加わることも一般的です。例えば、交通費支給や家族手当、資格手当などがこれに該当します。また、特定の目標達成や業績向上に対する「賞与(インセンティブ)」は、モチベーション向上や目標意識を高めるための重要な手段で、多くの場合その会社の評価制度と連動しています。ベンチャーなど新興企業の場合は、高いパフォーマンスを発揮した従業員に「ストックオプション(従業員に与えられる新株購入権)」を与えることもあり、これによって従業員の会社への帰属意識や長期的なコミットメントが促されます。これに加えて報酬の一部としての「福利厚生」は従業員の安定した生活基盤を支え、働きやすい環境を提供します。これには健康保険、退職金制度、リフレッシュ休暇、社員食堂なども含まれます。

賃金の方針

賃金の方針を決定する際には、様々な考え方が存在します。「能力成果主義」は個々のスキルや全社・部門・個人の業績を基準に報酬を設定し結果に応じて評価します。これに対し、「生活主義」は従業員の生活水準や家庭状況を考慮に入れた報酬設計を行います。これは先述した資本主義の原則である「労働の再生産」を前提としており、「年功序列主義」もその一種であり、勤続年数が長いほど高い報酬を得られるシステムは、従業員の安定的なライフプランの設計をサポートすることで、過度な評価重圧を排除する効果や、離職防止の効果があります。これらの方針は、企業の戦略、文化、業界の特性、競合環境、社会環境などの状況によって選択され、組織の目標達成と従業員満足のバランスを取るための戦略的に決定されます。

報酬とモチベーションの関係

報酬と従業員のモチベーションとの間には密接な関係があります。多くの「モチベーション理論」がこの関係を探求しており、適切な報酬はモチベーションを向上させることが示されています。このコラムでもたびたび取り上げている通り、金銭的報酬だけではなく、「非金銭的報酬」もまた重要です。例えば「キャリア成長の機会」、「職場での自立性や創造性の発揮」、「職場の人間関係」などもこれに該当します。また、過剰なインセンティブが逆にモチベーションを下げる「アンダーマイニング効果」も知られており、報酬は与えれば与えるほど良いというわけでもないので、報酬設計にはバランス感覚が求められます。

まとめ(結論)

基本的な報酬の概念や仕組みを理解することは、評価者であるリーダーにとって不可欠な知識です。適切な報酬設計によって、従業員のモチベーションを最大限に引き出すだけでなく、企業の持続的な成長と競争力の向上にとって正に核とも言えます。

各種報酬の選択とその適用によって、企業は多種多様な労働力を効果的に活用し、変化する市場環境に柔軟に対応することが可能となります。リーダーは報酬に対しての正しい知識と認識をもって、より公平で効率的な報酬システムを構築する責任があります。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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