ゴルフ場改修工事のプロジェクトマネジメント

現在私の仕事の一つにゴルフ場改修工事のプロジェクトマネージャーがありますが、実は日本のゴルフ場では外部のプロジェクトマネージャーやコンサルタントを活用する事例は多くありません。

一方で海外のゴルフ場建設工事や改修工事ではほぼ全てのプロジェクトにプロジェクトマネージャーがオーナーによってアサインされることから、Owners repesentitive(オーナー代理人)とも呼ばれます。

今後日本でも私のような仕事が広まっていくかは分かりませんが、今回はあまり知られていないオーナー代理人/プロジェクトマネージャーの仕事について書いてみたいと思います。

目次

オーナー代理人 / プロジェクトマネージャーの役割

ゴルフ場改修工事で起用されるエージェントの役割は多岐におよびますが、突き詰めると「QCDの管理」ということに尽きます。

「QCD」とはQuality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の管理であり、要するに高品質で低価格な工事を期日通りに実施するため、オーナーに代わってプロジェクトの指揮を取るスペシャリストということになります。

当然ゴルフに関する知識はもちろん、経営(特にファイナンスやマーケティング)に関する知識、コミュニケーションスキル、課題解決力やリーダーシップなどの総合的な能力が必要な仕事と言われます(私にそれが備わっているかは別として…)。

ゴルフ場のプロジェクトマネージャーの仕事内容

具体的な仕事は、まず工事のコンセプトを明確にして、投資の有効性の判断、実施計画の作成、計画に合った設計者や施工業者の選定から、予算計画の作成、仕様(スペック)の決定、入札、工程管理、品質管理などをプロジェクトの完了まで実施します。

エージェントが入ることで入札交渉や、分離発注(設計や施工の一部を別の会社に発注すること)などで施工費が削減可能となるため、これが品質と価格を高い次元でバランスさせるポイントにもなります。

実際に今回のプロジェクトでも、散水設備の導入交渉のためにベトナムに行ったり、日本未導入のバンカー基盤の導入検討のためにハワイに行ったりと、メーカーとの交渉や、工事に使う資材の有効性判断の代行なども実施しました。

こうした仕事をオーナー自身が実施したり、あるいはゴルフ場内で支配人やキーパーが代行するケースが日本では多いのですが、多くの人が関わるプロジェクトでは、メンバーの合意形成に必要な形式化(文章や資料にまとめる)するスキルが必要となるため、前述したように海外ではほぼ100%私のような外部のビジネススペシャリストが起用されます。

外部人材が登用される理由として最も大きいのは、先に述べたような知識やスキルに加えて、オーナーや支配人が本来の仕事をやりながら片手間でできるようなボリュームの仕事ではないという物理的な問題が大きいと思います。

プロジェクトは予定通りにいかないのが当たり前

これはゴルフ場ビジネスに限らずあらゆるプロジェクトに言えることですが、規模が大きくなればなるほど、期間が長くなればなるほど、関わる人が多くなればなるほど、範囲が広くなればなるほど、予想外のことが起こる確率は増えます。

期日通りに進まない、予算通りに進まない、仕様通りに進まない、が日常茶飯事の世界です。

プロマネの仕事の最も重要な点は、こうした予想外の事態の防止や起こった際の問題の収集であり、関係者の合意形成をとりながら日々の課題を解決しながら、完成というゴールに進むことです。

時にはコーチングも必要

もちろんプロジェクトに関わるメンバー全員がプロフェッショナルとは限りません。むしろ私自身も含めて初めて経験することが多いので、未経験のことにも挑戦しながらチームが成長できるようなコーチングも必要になります。

外部のプロフェッショナルやスペシャリストに依頼することもできますが、チームの可能性を信じて成長・育成しながら前に進むことも、主目的であるコストと品質のバランスを高めることに繋がります。

責任も重いが達成感もある

ゴルフ場の建設工事や改修工事ともなると数億円から数十億円規模のプロジェクトになりますから、それをまとめる責任はプレッシャーは相当なものになります。一方で、自分自身の成長や、チームの成長、なによりも大人数で一つの歴史的なゴルフ場を作り上げるという醍醐味があります。

オーナーの意思を尊重する

最後に自分自身への心覚えとしても書いておきたいことは、オーナーの意思を尊重するということです。エージェントはプロジェクトの最前線に立っていますから、どうしてもプロジェクトへの個人的な思い入れが出てきますが、プロジェクトの出資者であるオーナーの意向や意思はどんな時でも最優先事項です。

もちろん専門家としての自分の意見や思いを伝えることも仕事の一環ですから、進言はしますが、意思決定や判断が下されたら、それを実行できるように支援するフォロワーシップも重要な能力ということを書き留めておきます。

まとめ

かなりニッチな仕事ではありますが、プロマネという仕事自体はシステム開発だろうと、建設だろうと、ゴルフ場の工事だろうと基本的な仕事の内容や求められるスキルは変わらないと思います。

例えばシステム開発の場合であれば、システムの仕様を決めたり、エンジニアをアサインしたりするのに、依頼者側にもシステムについて詳しい人が必要になるのと同じように、ゴルフ場を作るのであれば専門家を代理人にすることで施主の要望がスムーズに設計者や施工業者にも伝わるようになります。

日本のゴルフビジネスでは私のような外部のエージェントはまだかなり少ないのですが、今後も日本に素晴らしいコースが増えるように頑張ります。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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