月刊ゴルフマネジメント連載#12 コーチングのフィードバックは「知るは易し、行うは難し」

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第12回はのテーマは『コーチングのフィードバックは「知るは易し、行うは難し」』です。

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コーチングではよく「フィードバック」という言葉が使われます。このフィードバックですがまさに「知るは易し、行うは難し」で、知っていてもそれが出来るようになるためには、かなりの訓練が必要です。今回はフィードバックとは何か、そしてフィードバックを実践するためのコツについてお伝えします。

目次

コーチングにおけるフィードバックとは

Feedbackの「Feed」とは(食物など)を「与える」という意味で、「Back」は「返す」や「戻す」という意味ですが、その名の通り、相手が職務を遂行したり、あるいは自分やチームや会社のために何か貢献や行動してくれた際に、その相手に対して「栄養になるものをお返しをする」という意味です。

ここで言う栄養とは「心の栄養」、すなわちモチベーション(動機)や、エフィカシー(効力感)のことを言います。

仕事を頑張ったら上司やチームメンバーから労いの言葉をかけてもらったり、感謝を伝えられたりすると、またやろうと思えたり、仕事や職場が好きになったり、新しい挑戦にもやる気がでたりしますよね。それがコーチングにおけるフィードバックの効果です。

フィードバックと評価の違い

フィードバックとよく似ていて間違われやすい行為に「評価」があります。もちろん評価もモチベーションやエフィカシーを高める要因になりますが、評価の目的は仕事の「良し悪し」つまり「質」や「能力」を計ることにあります。

分かりやすく言えば、テストの点数や通知表の成績、100メートルを何秒で走れるかというタイムの計測も評価です。

仕事の中では個人の「売上高」や「生産性」などのKPI(重要業績指標)で計られる場合が多く、報酬や配置の決定、あるいは適正を確認するのにも使われます。

しかし評価の場合、例えば悪い点数(評価)を伝えられてやる気になるという人はまずいません。ゴルフでも「今日はスコアが悪かったから明日からやる気満々だ」という人はまずないでしょう(笑)

なぜなら一般的に低い評価を伝えられた場合に人は以下のような反応を起こします。

・気分が落ち込む
・自信が低下する
・モチベーションが下がる
・自己嫌悪になる
・不安や恐怖を感じる
・周囲を拒絶したくなる
・組織や評価者に対して不信感や悪意を抱く

もちろん悪いスコアに慌てて急に練習場に行ったり、レッスンを受けてみたり、クラブを買い替える人がいるのと同じように、仕事でも低い評価が改善行動につながる場合もありますが、そうした人はかなり稀であり、多くはしばらくのあいだ反抗的な気持ちになったり、行動が消極的になったりすると言われています。

実際に私も悪いスコアが出ると「しばらくゴルフにいくのはやめよう」と思ったり、「来週のコンペに行きたくないなー」と思ったりします(苦笑)

一方でフィードバックは、その行為の良し悪しについては言及せず、感謝や労い、共感、承認、期待と言った言葉でその人の心のタンクを満たし、次の行動に移るための栄養を与えることが目的です。評価は心理的プレッシャーを与えることでやらざるを得ない状況を作り出すのに対して、フィードバックは心に栄養を与えてやる気になる状態(内発的動機づけ)を作り出すという違いがあります。

フィードバックのよって以下のような反応が見られると言われています。

・気分が高揚して気持ちが前向きになる
・やる気が起こる
・幸福な気持ち、嬉しい気持ちになる
・他者からの期待や希望を感じる
・アドバイスや助言を受け入れたくなる
・何かを与えたくなる
・組織や評価者に対して好意を抱く

フィードバックが難しい理由

ではここまでフィードバックのメリット、評価のデメリットが分かっているにも関わらず、私達はついつい人にフィードバックではなくアドバイスや評価をしてしまうのでしょうか?

フィードバックが難しい理由①「制御欲」

もっと社員が頑張ってくれたら…経営者やマネージャーなら誰しもそう思うものです。しかし実際は自分が思ったように人は動いてくれない。そうするとついつい「もっと頑張って欲しい」「こうして欲しい」「こんな能力を身に着けてほしい」といった具合に、その人の意思や気分に関係なく、行動や能力を誘導するための言葉をかけてしまいがちです。私達にはこのように「他人を自分の意図したとおりに動かしたい」という制御欲が働いていることを認識しておく必要があります。

フィードバックが難しい理由②「公平性」

特に組織の場合、売上や利益に貢献した人とそうじゃない人、能力の高い人と低い人、こうした人達を同じ待遇にしておくと組織に不満が出てきてしまいます。ですから報酬や配置についての公平性を担保するために評価制度が設計されています。当然評価の高い人、低い人が出てきますから、低い人に良かれと思って、「もっとこうしたら評価あがるんじゃない?」と言った具合に比較してアドバイスしまうケースがあります。私達は「人を同じ物差しで測りたい」という思考が働くことを認識しておく必要があります。

フィードバックが難しい理由③「正義感」

「あなたのこういうところが良くない」「ここは直した方がいい」「これはあなたのためを思って言っている」そう思う事も多いのではないでしょうか。倫理や哲学の世界でさえ正しさや正義の定義はいまだ明確に定められていないにも関わらず、私達は「自分が正しいと思うことが絶対である」という思い込みがあることを認識しておく必要があります。

今回例に挙げたのは3つですが、実際にもし自分が言われる立場だったとしたら、これらを言われて次の行動につながる「心の栄養」にならないことは何となく想像できると思います。

一方で、ご自身の行動や部下への指導を振り返ったときに、無意識にこうした言葉をつい口にしてしまったという記憶がある方も多いのではないでしょうか?

フィードバックを実践する

さて、今回のコラムではフィードバックとは何か、フィードバックと評価の違い、どうしてフィードバックが難しいのか、という内容を書かせていただきました。

多くの人が”良かれ”と思ってしているアドバイスや評価のほとんどが、逆にモチベーションを下げる結果になっている可能性があるという事を知っていただけたらと思います。

そして、次回のコラムではいよいよ実践編として、フィードバックを実践するオススメのティップスを紹介したいと思います。お楽しみに。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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