月刊ゴルフマネジメント連載#20 全てのマネージャーが身につけるべき「1 on 1」のテクニック(上)

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

月刊ゴルフマネジメント(一季出版)→

第19回はのテーマは『「言っても無駄」という組織にならないために 学習性無力感への対応』です。

月刊ゴルフマネジメントに掲載された記事一覧は下記のリンクからご覧いただけます。

takashioya.com
monthly-golfmanagement | takashioya.com
monthly-golfmanagement | takashioya.comタグ「monthly-golfmanagement」の一覧ページです。

近年ではコーチングの代表的な手法として実施されている「1 on 1」ですが、「1 on 1」はテクノロジー企業が多く輩出されている米国シリコンバレーの近代的企業の組織文化として導入されていましたが、最近ではその効果から世界中の企業で導入されている典型的な育成手法と言えます。

適切に行えば有効という声が多い一方で、社員が1 on 1に慣れていないと、1on1で話が続かない状態になってしまったり、上司から一方的に話すだけの説教の場になってしまうことがあります。こういったケースに陥った会社からは「1on1は、やっても意味がない」という声があがることもあります。

また多くの日本企業でも「個人面談」と称して1対1の面談は行われているケースがありますが、「1 on 1」って聞いたことはあるけど「個人面談」とどう違うの?という疑問や、そもそも「1 on 1」なんてやったことがないから「やり方も、効果も分からない」という方も多いと思います。

今回は1on1とは何か?、そして実際に導入する場合はどのように進めれば良いのか?について書いてみたいと思います。

目次

いま1on1が必要とされている理由

そもそもなぜ現代のビジネスシーンにおいて1on1が必要とされているのでしょうか?

社会の不確実性

現代の混沌とした社会は「Volatility(変動性・不安定さ)」「Uncertainty(不確実性・不確定さ)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性・不明確さ)」の頭文字をとって「VUCAの時代」と呼ばれ、急速かつ、不確実な市場の変化が起こっている昨今では、これまでの経験や物差しが通用しなくなっています。

ほんの数十年前であれば、上司が経験したことを部下に教えればよかったのが、社会変化のスピードが速く「上司の言っていることは時代遅れ」というケースが多く、いくら経営者や上司であっても正解が分からないということが多くなってきました。

誰の意見が「正しい」かについての勝敗をつける「議論」ではなく、話し合いによって課題を解決していく「対話」が求められています。

人材育成方法の変化

また、現在ではインターネット上にあらゆる情報が存在しています。

これまでは上司や先輩が教えてきた業務上の知識も「googleで検索すれば調べられる」ため、上司が部下に教えられることは減ってきています。むしろ、子供のころからインターネットに慣れ親しんできた若年層のほうが、情報収集には長けていると言えます。

ですから上司が部下に教えるという一方的なコミュニケーションでは成長が制限されて組織能力が低下してしまいますから、時には上司が部下から学ぶような、「対話型組織」が必要になっています。

労働人口の減少と流動化の加速

特に日本では人口減少にともなう労働人口の減少が顕著になってきています。また旧来型企業の代名詞でもある「終身雇用」や「年功序列」といった組織制度が崩れて転職のハードルも下がっています。

つまり企業からすると、人材の獲得や引き止めが大きな関心ごとになっています。

特に、若い世代では「人間関係がよい職場」「自分らしさが生かせる仕事」というのが収入よりも重要視されており、そういった声が届きやすい職場環境を作り従業員満足度(Employee satisfaction)を上げるというのも1on1が浸透している要因と言えます。

1on1の目的

一般的に企業で行われている「個人面談」では「情報交換」「業務連絡」「評価や査定」「説得や交渉」を目的としているのに対して、①成長のために行う。②定期的に行う。③特定のフレームワークに基づいて科学的に行う。という異なる特徴や目的があります。

1on1が具体的に果たす役割は「業務支援」「内省による成長支援」「精神支援(メンタルヘルスのサポート)」の3つです。

業務支援

業務支援は業務の中で困っていることがないかを確認し、遂行する際の障壁がないか、納期や期日に間に合いそうか、チームはうまく機能しているか、などの確認を行い、何か問題が発見できたら、その解決をサポートすることを意味します。例えば打ち合わせに同席する、納期を遅らせる、他のチームメンバーへ働きかける、などの解決に向けた動きを上司が支援することで業務が円滑に進み、成果が上がりやすくなります。

内省による成長支援

「内省」とは「自分の考えや行動などを深く省みること」ですが、この内省の目的は、実際の出来事や経験を「学び」に変換し、次の行動に活かすことです。

成人の成長に影響を与えた要素は70%がその人の仕事経験によると言われています(米国ロミンガー社の調査)。要するに私達は仕事という経験を通じて成長しているのです。

こうした成長につながる経験を学習(学び)に変換するのが、組織行動学者のデービッド・コルブが提唱した「経験→省察→概念化→実践」という4段階からなる「経験学習モデル」です。

このように、経験→言語化→教訓化→教訓を実践というサイクルを回すことで、経験から得た学びを実践するというループを作り出すことで成長を実現します。このサイクルの中の「省察=言語化」をサポートするのも1on1の重要な役割です。(具体的な対話の方法については次号に掲載します。)

精神支援(メンタルヘルスのサポート)

職場環境や人間関係で不安やストレスに感じていることや、職場以外のプライベートで気に掛かっていることも含めて、精神的な負荷軽減をサポートすることを意味します。

厚生労働省の調査によるとメンタルヘルスが理由で休職あるいは退職した従業員がいる企業は10%程度と言われており、社会人の約6割が「職場で強いストレスを感じている」と回答しています。

強いストレスは心身に大きく影響を与えますから、当然仕事の判断や行動にも影響が出てきます。従業員の心の健康を管理することや、状態悪化を早期に察知することはもちろん大事ですし、話すことでラクになるということもあるので、定期的にこうした対話をすることも重要になります。

1on1は従業員の能力開発はもちろん、離職の防止、モチベーションの向上、メンタルヘルスケア、など多くの効果をもたらしてくれます。次号では実際に1on1を実施する際の具体的な手法について書いてみたいと思います。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

目次
閉じる