月刊ゴルフマネジメント連載#40 リーダーにカリスマ性は必要か?カリスマの正体と弊害について

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』で、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第40回はのテーマは『リーダーにカリスマ性は必要か?カリスマの正体と弊害について』です。

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経営者の中でも特に事業を立ち上げた張本人である創業者は絶大なカリスマ性を持っているケースが多く、そのカリスマ性の高さゆえに、承継が難しくなるケースがあります。

また管理職などの一般リーダーの中でも、人を惹きつける魅力で悩む人も少なくありません。
今回はカリスマ性の正体と、その必要性や弊害について書いてみたいと思います。

目次

カリスマ性とは?

カリスマとは古代ギリシア語で「神の恵みの賜物」を意味する言葉で、非人間的な資質や能力をもった人を意味し、リーダー、教祖、預言者、呪術師、英雄などによく使われる言葉で聖性とも言われます。

カリスマ性のある人物は群衆や人を惹きつける魅力を持ち、それが組織の統制や凝集性に影響を与えていると考えられていることから、ストッグディル(R.Stogdill, オハイオ州立大学教授, 経営学・心理学)、コンガー(Jay A Conger, クレアモント・マッケナ大学)、カヌンゴ(Rabindra Kanungo, マギル大学)らが、研究者としてその特徴を発表しています。

カリスマ性のある人物には以下の特徴がみられると言われています。

ビジョン:

カリスマ性のあるリーダーは、多くの場合、将来に対する明確で説得力のあるビジョンを 持っており、より良い未来に向かって人々を鼓舞します。

自信:

カリスマ性のある人物は、常に高いレベルの自信を示し、それがフォロワーに安心と信頼を与えます。ここで言う自信とは堂々とした態度や、ポジティブなマインド、批判や失敗に対する前向きな態度などを言います。

表現とコミュニケーション:

本物の感情(喜怒哀楽)を表し、相手との感情的な関係(損得や実利ではない関係性)すなわち個人的なレベルで人々とつながることに優れていることが多いのが特徴です。

自分の意見やアイデアを伝える際には、相手の感情を揺さぶり、効果的に伝えることができます。不利な状況では周囲を鼓舞し、努力をするよう周囲に働きかけます。

社会やフォロワーのニーズに敏感:

フォロワーの気持ちに敏感で、常にフォロワーの感情を気にかけています。社会や他人のニーズを理解する能力に長けており、そのニーズに応えようとする傾向が強いと言われています。結果周囲の心を掴みます。

行動力とリスクテイク:

好奇心旺盛で未知の物事に対しても強い探究心を持っています。行動のスピードが並外れて高く、損得よりも意思や自身の信じる価値観を優先することから、型にはまらない行動をとったり、一見不合理な判断をしたり、周囲を驚かせるようなリスクの高い行動を取ります。

一般的に人間はリスクを避けますから、そうした型破りでユニークな決断や行動が、非人間的と評価される原因になっていると言えます。

代表的なカリスマ性のあるリーダーたち:

政治指導者:

ネルソン・マンデラ(若くして反アパルトヘイト運動を起こした20世紀の人権のシンボルとして最も代表的な存在)、ジョン・F・ケネディ(アメリカ合衆国の政治家。同国第35代大統領で第二次世界大戦の英雄)、ウィンストン・チャーチル(第二次世界大戦期の首相としてナチスから世界を救った)、マハトマ・ガンジー(「非暴力、不服従」を唱え、インドの独立運動を指揮したインド独立の父)。

宗教指導者: 

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(ガンジーの非暴力的抵抗の教えに共感し、アフリカ系アメリカ人公民権運動の穏健派の指導者として非暴力差別抵抗活動を行った牧師)、マザー・テレサ(貧困や病に苦しむ人々の救済に生涯をささげ、ノーベル平和賞を受賞した修道女)、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世(東欧の民主化や各地の民族紛争の終結にむけて大きな役割を果たし,2000年には聖地エルサレム訪問を実現するなど「空飛ぶ聖座」と呼ばれるほど多彩な活動を続けた)。

ビジネスリーダー:

スティーブ・ジョブズ(Apple社の創業者で革新的な製品を次々と世に送り出した)、イーロン・マスク(PayPal、スペースX、テスラ、ボーリング・カンパニー、OpenAIなど社会を大きく変える企業を次々を設立する連続起業家)、稲盛 和夫(京セラ・第二電電=KDDIの創業者、日本航空(JAL)を再建。たぐいまれな経営手腕と哲学を通じ経営の神様と呼ばれる)。

ご紹介したこのような人物と、特徴として述べた「ビジョン」、「自信」、「コミュニケーション」、「ニーズ察知力」、「行動力」という視点で見ていくと納得感も高まります。

カリスマ性は鍛えられる

2016年にスタンフォード大学のエマ・セパーラ博士は、カリスマ性に関する過去の研究についてレビューを行い、次の6つの部分を意識できれば「カリスマ性は後からでも伸ばせる」と結論出しています。

共感力:相手の気持ちに寄り添える能力

傾聴:相手の話を上手く聴く能力

アイコンタクト:相手と自分の考えを繋げる能力

情熱:相手の考えや行動を褒め、気分を向上させる能力

自信:他人の意見や考えに動じない能力

言語化:自分の考えを言葉に表現できる能力

リーダーにカリスマ性は必要か?

こうしたリーダーの特徴を見ていくと、確かに成果の大きさや、その人物の聖性に対して、カリスマの必要性を感じてしまう一方で、カリスマ性がなくても成功しているリーダーは山ほどいますし、歴史を振り返るとカリスマ性のあるリーダーがその魅力と権力によって破壊をもたらした例も山ほどあり、必ずしもカリスマ性は常に良いように作用するとも限りません。

カリスマ性よりも大事なこと

ハーバード大学の研究によるとリーダーシップの成功要因として様々な因子を研究した結果、「ポジティブな関係性のエネルギー」すなわち相手の感情を前向きにして、行動させるエネルギーが最も組織の成功に影響を与えていることがわかっています。カリスマ性はその中の1要素になり得るものの、それが全てを解決するわけではありません。

ですから、人としての魅力、それは「知性」であったり、「高潔さ」であったり、「勇気や励まし」などが、人々を惹きつけ、それによって人々の感情が動き、行動が変わり、成果が変わるのは当然の摂理とも言えます。

あなた自身、あるいはあなたの職場のリーダーはいかがでしょうか?

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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