月刊ゴルフマネジメント連載#41 ZPDを見極めてメンバーを成長させる

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』で、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

月刊ゴルフマネジメント(一季出版)→

第41回はのテーマは『ZPDを見極めてメンバーを成長させる』です。

月刊ゴルフマネジメントに掲載された記事一覧は下記のリンクからご覧いただけます。

takashioya.com
monthly-golfmanagement | takashioya.com
monthly-golfmanagement | takashioya.comタグ「monthly-golfmanagement」の一覧ページです。

「今できることだけをどれだけ積み重ねていっても、できないことができるようになるわけではない」というのは、ゴルフにもビジネスにも共通していることで、毎日同じようなルーティンワークをやっていても人は成長しません。一方で過度に難しすぎる課題を与えると失敗や挫折の経験が積み重なり、やがて自信や自己肯定感の低下につながって、人の成長を妨げてしまいます。

能力開発を目的としたスキルアップはもちろん、配置転換や、新入社員のOJTなど、メンバーが「出来ないことが出来るようになる」ために、どんなタスクを与えるかはリーダーが最も気を配ることの一つです。

目次

最近接発達領域(ZPD:Zone Proximal Development)とは?

最近接発達領域(ZPD:Zone Proximal Development)とは心理学者、レフ・ヴィゴツキーが発表した学習理論で、元々は子どもの発達領域の理論ですが、ビジネスパーソンの育成領域でも使われている育成理論です。

この理論では部下が今の知識とスキルでできる仕事(安心領域=自力で解決できる課題)と、誰かの助けなしでは解決できない課題(挑戦領域=現時点では自力で解決できない課題)との間の領域(ZPD領域=最近接発達領域)内での学習活動が、人材育成に効果的であると言われています。

実務の中でのOJT(On-the-Job Training = 職場の実務を通して行う教育訓練)では、この領域を見極めて、プロジェクトやタスクを与えることが重要とされています。

【画像1】

ZPDゾーンを見極めるためのフレームワーク

ZPDゾーンを活用した人材育成では、各メンバーのスキル(出来ること/出来ないこと)を把握している必要があります。また一方で動機づけ(モチベーション)には本人が望んでいるキャリアや結果についても知る必要がありますから、動機づけ要因(やりたいこと/やりたくないこと)も知っておく必要があります。

もちろんやりたくないことを全て除外してしまうと、本人の認知の枠組みを超えた成長ができなくなってしまうので、やりたくないと思っている原因(価値観や人生における時間の使い方の優先度)など深掘りしていくヒアリングも必要です。

その上で「出来ないけど/やりたいこと」を業務の中に組み込むことで、個々の成長を促していきます。

このようにZPDゾーンを見極めるためには、「部下の能力と適性」や「動機づけ要因」をしっかりと見極めることが重要です。

【画像2】

ZPDゾーンを活用した育成のステップ

育成するメンバーのヒアリングを終えて、具体的なタスクが決まったら以下のようなステップで進めていきます。

1.) イミテーションラーニング(模倣学習)

2.) ペアワーク

3.) フィードバックセッション

4.) インディビジュアルワーク

1.) イミテーションラーニング(模倣学習)

まずは先輩や上司である経験者の仕事を観察します。例えば課題解決の具体的な方法や、サービスや接客であれば顧客とのやりとりを学びます。

この時点では特に説明や解説は入れずに、まずはありのままを見せることで、「重要だと思った点」や「不安な点」「どんなミスが想定されるか」などを書き出してもらったり、言語化してもらうことで、認知を高めていきます。その上でロールプレイなどを数回実施します。

2.) ペアワーク

次のステップは経験者と学習者が2人でペアを作って、一緒に実際の業務やサービスを行います。

最初は経験者のサポートを学習者にしてもらい、慣れてきたら学習者のサポートを経験者がするという具合で進めていきます。

3.) フィードバックセッション

ペアワークが終わったら、業務終了後に具体的なフィードバックを行います。フィードバックの具体的な手法については、#12 コーチングのフィードバックは「知るは易し、行うは難し」、#13 フィードバックの種類を知る、#14 フィードバックを実践するでも書いてきていますので、ぜひバックナンバーから参考にしてみてください。

4.) インディビジュアルワーク

そして最後に1人で実施してもらいます。冒頭のZPD領域でも説明した通り、今の知識とスキルでできる仕事(安心領域=自力で解決できる課題)を増やしていくことがこの手法の目的ですから、「1人でできた」という自信が付けばワーク完了となります。

ZPDによる育成には支援者のスキルが不可欠

学習者がZPDで学習するには、上司、先輩、同僚などの自分よりも深い知識や、高いスキルをもった人が必要であり、それが学習者の成長を促進するという特徴があります。ですから学習者が成長するためには、指導者であるコーチやリーダーとなる上司がまずは十分に学習し成長しているという前提があります。

読者の皆さんはここ最近で、何か出来ないことに挑戦したり、あるいは誰かに指導をしてもらった経験は思い当たりますか?

人は常に誰もが学習者であり、誰もが指導者である。ということを再認識させられるZPD理論でした。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

目次
閉じる