月刊ゴルフマネジメント連載#43 上司を育成する「ボスマネジメント」

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』で、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第43回はのテーマは『上司を育成する「ボスマネジメント」』です。

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これまでこのコラムでは、主にリーダーである皆さんが部下や後輩などチームのメンバーを育成する手法について書いてきましたが、同じくらいに悩みが多いのが上司の取り扱いについてです。特に日本を含めアジアでは儒教思想や年功序列による配置によって、年上や上司に対してフィードバックしづらいという問題や、能力の伴わない上司が配置された部署では、チーム全体が機能不全となり、成果が出せないという状態に陥ってしまいます。

目次

ボスマネジメントとは?

ボスマネジメントとは、部下が上司の成長を支援するための管理手法です。通常、管理というとリーダーが部下の指導をすることが主ですが、ボスマネジメントではその逆を行います。この考え方は、組織内のコミュニケーションと効率を高め、より良い職場環境を作り出すことを目的としています。

ボスマネジメントの具体的な手法

具体的な手法としては、まず上司の強みと弱みを理解することが重要です。強みを活かし、弱みを補う支援を行うことで、上司の能力を最大限に引き出すことができます。
例えば、上司が戦略的思考に長けている場合、その能力を活かすために部下が日常業務の詳細な管理を担うことが考えられます。逆に、上司が細部にこだわるタイプであれば、部下が大局的な視点を提供することが有効です。

心理学の研究によると、このような相互支援の関係は、組織内の信頼感を高め、全体の生産性向上に寄与することが示されています。たとえば、Journal of Applied Psychologyに掲載された研究では、上司と部下の相互作用が組織の成果に大きく影響することが明らかにされています。

このことから分かることは、上司やリーダーからの一方通行の育成スタイルよりも、部下が上司を育てるという双方向型の育成スタイルの方がパフォーマンスが高いということです。

具体的なボスマネジメントの事例

一般的によく聞かれる傾向としては、上司は行動力はあるが、合意形成が苦手で1人で突っ走っていると評価されるケースです。

リーダーに求められるのは決断力や行動力ですから、こうしたバイタリティが評価されてリーダー職に配置されるのはよくあることですが、一方でこのようにバイタリティのある人は、「思ったらすぐに行動」という傾向が強く、それが「何も考えていない」「計画性がない」「軽率で慎重さにかける」という反面性があります。

その逆に慎重かつ融和な傾向をもつリーダーであれば、「決断力がない(優柔不断)」「時間がかかりすぎる」「細かすぎる」「勇気がない」などと評価されることが多いものです。

このように人間の特性には反面性があり、どこを切り取っても完璧という人はいませんから、長所と短所というのは表裏一体であり、まず部下であるメンバーが上司の特性を理解するというのが「上司の強みを活かすボスマネジメント」の第一歩ということが理解できると思います。

ボスマネジメントの注意点

ボスマネジメントを実施する際には、いくつかの注意点があります。
まず、大原則として上司に対する尊敬と敬意を持つことが不可欠です。上司を尊重する姿勢がなければ、効果的なボスマネジメントは実現しません。また、自分の意見を伝える際には、批判的にならずに建設的なフィードバックを心がけることが重要です。さらに、上司のプライバシーや立場を尊重し、適切な範囲内での支援に留める必要があります。

役職や人によって責任の範囲は違いますし、関心ごとも異なります。

例えばフロントエンドで働くサービススタッフの方からするとお客様の満足度や評価が第一の関心ごとになりますが、予算を管理する上司にとっては今月の利益が第一の関心ごとかもしれません。これを「あの人は数字のことにしか関心がない」と断言してしまっては、有益なボスマネジメントにはなりません。

相手である上司が利益を第一に考えているという”立場”を理解し、利益も大事しながら顧客満足度を上げるには?という新しい視点を与えることがボスマネジメントと言えます。

上司に気持ちよく動いてもらう

ボスマネジメントとは端的に言えば、上司の行動変容を支援し、会社やチームの成果に繋がるように働きかけることですが、それはすなわち上司に気持ちよく動いてもらうことです。そのために以下のようなポイントを意識しましょう。

明確なコミュニケーション:

上司とのコミュニケーションでは、明確かつ簡潔に意見や情報を伝えることが重要です。不明瞭なコミュニケーションは誤解を招き、効率的な業務遂行を妨げます。

定期的なフィードバック:

定期的に業務の進捗や成果について定期的に報告し、必要に応じてフィードバックを求めます。

いわゆるホウレンソウですが、気分でやらずに定期的なルールに従って運用するのがポイントです。

業務のサポート:

上司の業務負担を軽減するために、積極的にサポートを提供します。例えば、日常的なタスクの管理やプロジェクトの準備など、上司の負担を減らしてあげましょう。

イニシアティブの発揮:

自ら積極的に責任や業務を引き受け、上司が信頼して任せられる存在であることを示します。

尊敬と敬意:

上司に対する尊敬と敬意を持つことは、良好な関係構築の基礎です。上司の意見を尊重し、適切な敬語を用いるなどの行動が重要です。

個人的な関心の示し方:

業務に限らず、上司の興味や関心事にも注意を払い、適切なタイミングで関心を示すことで、人間関係を深めることができます。

建設的な提案:

問題が発生した際には、ただ問題を指摘したり、因果関係を述べるのではなく、解決策を提案することが重要です。一緒に課題を解決する仲間であることを感じてもらいましょう。

自己責任の強化:

自分の業務に対して責任を持ち、自主的に行動することで、上司は部下に安心して業務を任せることができます。

まとめ

ボスマネジメントは、上司と部下の関係を強化し、組織全体の成長を促進する有効な手法です。

誤解してはいけないのは、コーチングと同様に「労なくして得るものなし」ということです。

そして何よりも、あなた自身が上司に不満があるということの原因は、上司が悪いわけでもなく、部下であるあなたが悪いわけでもなく、あなたと上司との関係性の質が悪いことが原因だということです。

相互の理解と尊重に基づいてコミュニケーションが行われることで、より健全で生産的な職場環境を実現しましょう。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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