ゴルフ場会員権の種類と仕組みから考える再構築シナリオ

コロナ禍でゴルフ人口が増えたというニュースが報じられています。アウトドアで声も出さないゴルフは感染リスクの低いアクティビティとして注目を集めていて、それに伴ってゴルフ場の会員権が売れているそうです。

私も友人から「○○の会員権を買おうと思うんだけど」と相談されることがありますが、会員権の仕組みやメリットについて客観的な情報がなく、購入する一般ゴルファーの方からするとよく分からずに購入しているケースも多いようです。

またゴルフ場の経営者や従業員も、会員権の仕組みや元々の経緯を知らない世代に代替わりしたこともあり、そのあるべき姿が定められず会員権をどう活かしていけば良いのか決めかねているゴルフ場も多いように思います。

ゴルフ場会員権は資金調達の手段としてだけではなく、本来はクラブの安定経営や、豊かなクラブライフを提供するための手段として活用されるべきなのですが、特に日本ではうまく機能していない現状があります。

今回のポストはゴルフ場会員権の種類やベネフィットについて多面的な視点を得ることで、一般ゴルファーの会員権購入やゴルフ場事業の経営改善にお役に立てばと思います。

目次

日本のゴルフ場会員権の歴史と仕組み

まずパラグラフのタイトルにわざわざ「日本の」と付けたのには理由があります。

海外特にゴルフ場数世界第1位のアメリカのプライベートクラブやメンバーシップクラブと呼ばれる会員制ゴルフ場の場合、ゴルフ場の会員権は「株式」「不動産所有権」「プレー権」として発行されていますが、日本ではほとんどのゴルフ場の会員権は「債権 = 預託金証」として発行された歴史があります。これは日本のバブル期に財テクとして採用された特殊な方式であり、これが日本でゴルフを広めた原因であると共に、多くのゴルフ場の倒産(再生含む)を生み出した理由でもあります。

会員権の種類と資金調達の仕組み

一般的に新規でゴルフ場を作るのには60億円-70億円が必要と言われています。しかし多くのゴルフ場運営会社は資本金1000万円で設立されていますから、ゴルフ場建設に不足する資金を外部から調達する必要があります。

プライベートクラブの株式による会員権

会員権 = 株式 / 年会費 = 売上

海外のプライベートクラブの場合、この建設にかかる費用を複数の外部株主から株式として調達しています。設立趣旨に賛同した資本家が資金を出し合い、株主総会により経営陣(取締役)の任命や、重要な意思決定を行います。

また資本家のためのコースという色合いが強いため、ビジターがプレーをすることは難しく、メンバーである株主の紹介や同伴が必要とされます。さらにクラブの運営費(人件費、光熱費、コース管理費)は原則として会員からの年会費によって成り立つので、年間数百万円という年会費を支払うコースも珍しくありません。その代わりプレーフィーも練習場利用料も無料というコースも多く、ゴルフ場運営会社はオーナーである株主会員をいかに満足させるか事業活動の核になります。そのため日本でも一部のコースは株式会社ではなく一般社団法人の非営利団体として経営している法人もあります。

またプライベートコースはメンバーになるための基準を厳しく制定しているコースもあり、性別や国籍や職業などをその基準としているコースもあります。

このような排他性から人種差別や男女平等という議論の的になることもありますが、クラブの成り立ちを考えるとそうした同質性を重視する姿勢も理解できます。

リゾートコースの不動産所有権による会員権

会員権 = 不動産所有権(営業外収益) / 年会費 = 売上

ゴルフ場を避寒地や避暑地に作り、そこにプールやテニスコート、ジムやレストランなどの付帯施設を備えた複合リゾートを作り、さらに敷地内に住宅(主に別荘)を建てることで、その所有権(住宅の所有権と借地権)を会員権として販売しているケースです。シンプルに言えばゴルフ場の敷地内の家を買うと会員権が付いてくるというイメージです。

もちろん不動産ですから賃貸で貸し出すこともありますし、ホテルが付帯しているケースも多いので、閉鎖的なプライベートコースとは違い会員制と言ってもビジターもダイレクトに予約できるような仕組みが一般的です。

ランニングコストに当たる年会費は施設管理費のようなもので、リゾートの維持や管理に使われますが、ビジター収入が多いリゾートは比較的安く設定されている場合もあります。

こちらはクラブ運営に関して会員が影響を与えることはなく、不動産の価値があがるように施設やサービスを充実させていくことが事業活動の核になりますから、ゴルフ場ビジネスというよりも不動産ビジネスという色合いが強いのが特徴です。

メンバーシップコースのプレー権としての会員権

会員権 = 売上 / 年会費 = 売上

オーナー個人からの出資あるいは借り入れや、銀行からの借り入れで建設されたコースは、世界的に見ると最も一般的な形態の一つで、プレー権としての会員権を提供しています。

こちらはクラブのメンバーになるという権利を販売しているもので、Life time(生涯)メンバーシップという所有者が亡くなるまで権利を保証するものや、Yearly(年次)メンバーシップという決められた期間内において権利を保証するものがあります。

私も海外のコースの年次メンバーシップを持っていますがそれは5年間有効なもので年会費込で購入時に支払うことになっています。ライフタイムメンバーの場合は年会費は毎年あるいは毎月の引き落としというケースが多く、名門コースで年10-15万円程度というところが多い印象です。

こちらのコースもビジターはゴルフ場のサイトからプレー予約ができることが多く、ゴルフ場は会員権を販売することでキャッシュフローが改善されたり、定期収入が得られるのでメンバーシップベネフィット(会員利益)という会員に提供するサービスを充実させます。

代表的なメンバーシップベネフィットの例しては

・競技会への参加
・メンバー同伴者のプレー料金値引き
・ファミリーメンバーの登録(家族向けサービス)
・レストランやプロショップでの割引
・練習場の無料利用
・所属プロによるレッスン会
・メンバー向けのオフ会(交流のためのワインの試飲会や車の試乗会)
・提携コース、姉妹コースのプレー割引

などを提供しています。

こうした特典が充実すればするほど会員権の人気が上がるので、コースに来場したビジターにベネフィットをアピールすることで収益を上げることが出来ます。

日本の多くのコースで採用された預託金証としての会員権

会員権 = 負債 / 年会費=営業外収益

最後はバブル期に日本の多くのゴルフ場が採用した預託金証による会員権です。

冒頭に記載したようにゴルフ場建設費用の調達方法として個人向け債権を発行し、その債権のクーポン(債権の購入者に与える利息)としてプレー権を付帯させるというファイナンスが生み出されました。
債権という性質上ゴルフ場が直接売買することはなく、いまでも会員権業者などの仲介業者が入るのはこのためです。
当時は銀行が取り扱っていた例もあるようです。

これはバブルで土地価格が上昇していて債権価格の額面割れリスクを過小評価していたこと、そしてゴルフブームによってゴルフ場には収益力があり安全な資金調達(投資)と見なされていたことで、ゴルファーだけでなく投機目的でも多くの資金が流入し、企業名義の法人会員なども誕生しました。

しかしバブル崩壊によりプレー需要が低下したことや、加熱して実態を上回る価格で価格で取引されていた債権は暴落し、償還(返済)期限を迎えても、その借金を返せないコースが続出する事態となりました。

日本では2000コース以上がこのスキームで作られていると言われており、これまでで800件以上(日本の全ゴルフ場の約1/3)とも言われるゴルフ場倒産の原因となっています。

またそうしたゴルフ場の運営が大手ゴルフ場運営会社に買収(譲渡)または委託されたことで、日本のゴルフの低価格化、大衆化が進んだというポジティブな変化の一方で、旧来のゴルフ場はプレー料金低下による価格競争の影響で厳しい経営を強いられ、預託金証による負債は未だ経営課題として重くのしかかっています。

日本のゴルフ場に求められる会員権の再構築シナリオ

ここで過去の過ちを指摘することはナンセンスですし、実際に私達が数多くのゴルフ場に囲まれ、ゴルフを楽しめているのはこうした背景によるものなのでその資金調達スキームの是非についての言及は避けますが、現在ゴルフ場が抱える問題は、返済を要求されると困るという債権者への配慮もあり、経営環境が悪化しているにも関わらず年会費の値上げや規約の変更が出来ないことや、年会費収入が少ないのでビジター集客に注力せざるを得ず結果的にメンバーシップやクラブライフという言葉が形骸化してしまい、会員権価値をさらに低下させているという悪循環になっているということです。

すでにご存知の通り、目先のビジター集客に依存していく先には大手運営会社との熾烈な価格競争が待ち受けており、集中購買やローコストオペレーションで勝る大手運営会社との勝負は分が悪いことは周知の事実です。

また長期のマクロ環境でみても国内ゴルフ人口は減少していくことからも、グローバルスタンダードな外国人から見ても魅力的なメンバーシップベネフィットを作っていくことは、ゴルフ場ビジネスの長期戦略の上でも選択肢になりうると思います。

足元の償還問題というファイナンスの課題に目が向きがちですが、ゴルフ場事業の本質である付加価値の創出という原点に立ち戻り、メンバーシップベネフィットというサービス開発に目が向けられることが、ゴルフ場事業の継続的な発展や、ゴルフ文化の醸成に大きく貢献することと思います。

会員制ビジネスの本質的な価値を追求する

会員権購入のチェックポイント

最後に一般ゴルファーむけに会員権購入のポイントを整理しておきます。

購入の目的

まずなぜ会員権が欲しいのか?ということを考えてみましょう。

例えば

・土日しかゴルフに行けないので、プレー代を節約したい
・クラブ競技に出て腕を磨きたい
・一人でも気軽にいけるコースが欲しい
・他の会員との交流やクラブライフを楽しみたい

など様々な購入理由があると思います。

自分の希望にあった条件が満たされているのかをしっかりと確認しておきましょう。

特に購入価格以外にかかる費用、入会金、名変料、年会費、などのコストの確認は忘れずに。

ゴルフ場の経営状態や運営方針の確認

会員権を購入した数年後にゴルフ場の経営状態の悪化により経営母体が変わり、クラブの運営方法が大きく変化する可能性もあります。

こればかりはビジネスなので仕方ないとも思えますが、そうでなくても、メンバーシップベネフィットの内容や年会費の金額、クラブの運営方針や世界観(コミュニティのビジョン)をもっているのかを確認しておくと良いと思います。

会員権の種別

上述した通り、一口に会員権と言っても様々な種類がありますが、日本では社団法人になっているような一部の超名門コースを除き、プレー権証、あるいは預託金証の会員権が市場で取引されている会員権ということになります。また預託金証のコースもその多くが既に民事再生によって大幅に額面を減額あるいは免除されていることから、会員権による損益がでる可能性は少ないと思いますが、特に預託金証のコースに関しては、額面金額、償還期限、償還されなかった場合の対応(会員権の分割/年間費の免除/債権種別の変更)などを確認しておくことをおすすめします。

またプレー権証の場合はゴルフ場が直接販売しているケースがほとんどなので、気に入ったコースがあれば会員権の販売をしているか調べてみるのもいいでしょう。

プレー権の場合は、平日会員、全日会員、シルバー会員など利用シーンに合わせた会員権が設定されているケースが多いので、自分にあった会員権を選べるといいですね。

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この記事を書いた人

ゴルフ活動家
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