ゴルファーは自分に合ったティーを選んでいるか?USGAが示したティーオプションの正しい提供方法

日本のゴルフ場ではフルバック、バック、レギュラー、フロント、レディースといった具合に3-5つ程度のティーの選択肢(= ティーオプション)が提供されています。

近年では社会潮流であるジェンダーレスを意識して”レディースティー”という呼称をなくす動きも出ていたり、あるいは女性ゴルファーやシニアゴルファーの増加に伴い、距離の短いティーオプション(フォワードティー)を追加するゴルフ場も増えてきました。

今回はUSGAグリーンセクションが2022年に発表した「Tee Options on Golf Courses: Supply, Demand and Opportunities(ゴルフ場のティーオプション: 供給、需要、そして機会)」を要約しながら、日本のゴルフ場が行うべきティーオプションの提供方法について考えていきたいと思います。

Tee Options on Golf Courses: Supply, Demand and Opportunities(ゴルフ場のティーオプション: 供給、需要、そして機会)

アメリカのゴルフ場の平均的なフォーワードティー(最も前のティー)の平均的な長さは4,952ヤード、バックティー(最も後ろのティー)の平均的な長さは6,518です。

今回のレポートで多くのゴルファーが自分の飛距離に能力に適していないティーでコースをプレーしている傾向があることがわかりました。

目次

コースの長さとティーオプション

表1(出典:USGA)

まずコース全体の長さに焦点を当てます。
表1は、18ホールのアメリカのゴルフコースで最も長いティーの距離が6,000ヤード未満から7,000ヤードを超える範囲まで均等に分布していますが、18ホールのバックティーの中央値は6,518ヤードであることがわかります。

表2(出典:USGA)

一方でフォワードティーでも同じように分類すると4,800-5,200ヤードのコースが38%でピークを迎えており、18ホールのフォワードティーの中央値は4,952ヤードです(表2参照)。

表3(出典:USGA)
表4(出典:USGA)

USGAのハンディキャップシステムに入力されたスコアを見ても、男性ゴルファーはバックティーの距離が伸びるほどにスコアを入力する人が伸びるのに対して、女性ゴルファーによるスコア投稿数がフォワードティーの長さが短くなるにつれて増加することを示しています(表3-4参照)。
(一般的にゴルファーは自分の実力を反映したと感じたスコアを提出する傾向にあります)

この理由はバックティーの距離が延びれば伸びるほど男性ゴルファー向けのティーオプションが増える傾向にあるのに対して、女性ゴルファー向けのティーオプションは通常1つのみであり、女性ゴルファーには適切なティーオプションが提供されていないだけではなく、飛距離能力に対して長すぎることが多いことを示唆しています。

表5(出典:USGA)

実際に男性ゴルファーが選択する平均的なティー距離は6,089ヤード、女性ゴルファーが選択する平均的なティー距離は5,071ヤードです。女性ゴルファーが選択するプレー距離の分布は、平均値の近くでより狭く集中しており、男性ゴルファーはより広範なティー長をプレイしていることを示しています(表5参照)。
これは、男性ゴルファーが自分の能力に合ったティーオプションをより多く持っているためです。

最も利用される距離

より多くのコースで短いフォワードティーが提供されれば、女性プレイヤーはより広範なオプションを活用し、2つのカーブはより類似したものとなり、女性ゴルファーのカーブのピークは短く、分布はより広がると考えられます。

85%の男性はバックティーとフロントティーの中間のティーを使うことがわかっており、女性はフォワードティーもしくはフロントティーでプレーする傾向があります。

表6(出典:USGA)

また男性はティーが6,600ヤードを超えると使用率が10%未満になるという興味深い観察結果も見られました(表6参照)。

表7(出典:USGA)

バックティーの距離が6,401〜6,600ヤードの範囲に達すると、85%以上の男性ゴルファーがバックティー以外のティーを選択します(表7参照)。
7,000ヤードのコースではわずか3%の使用率であることがわかりました。

表8(出典:USGA)

一方で女性に対しては40%以上のゴルフコースは5,000ヤード未満のフォワードティーを提供していません。
スコア投稿データに基づく使用パターンを考慮すると、一般的な女性ゴルファーに対しては4,400〜4,600ヤード以内のフォワードティーがより適していること示していますが、男性のフロントティーに相当するティーオプションを設定するにはフォワードティーを4200ヤード未満にする必要がありますが、実際にはフォワードティーが4,400ヤード未満になると、多くの女性がそれ以上長いティーを選択してプレーしていることがわかります(表8参照)。

表9(出典:USGA)

ゴルファーは自分に適したティーでプレーしているか?

表10(出典:USGA)

USGAが持っているハンディキャップインデックスのデータや、ゴルファーの飛距離分布に関するデータに基づくと、少なくとも半数の男性ゴルファーと、少なくとも4分の3の女性ゴルファーが、自分の能力に対して長すぎるティーからでプレイしていることがわかりました(表10参照)。
もちろんどのティーでプレーすることが最も満足度が高いかについて議論の余地はありますが(実力に見合わないティーからの挑戦を楽しむゴルファーもいる)、少なくとも多くのゴルファーが自分のスキルや飛距離能力に対して長すぎるティーを使用している傾向があると言えます。
これはゴルフ産業の最も頭を悩ませるスロープレーの改善にも通じる問題です。

筆者考察

冒頭にも述べたように日本の多くのゴルフ場でも、フォワードティーを新設するコースが増えてきていますが、ただ前にすればいいというだけではなく、適切な長さを検討しながら設置することや、フォワードティーだけではなく、バックティーやレギュラーティーの長さも同時に見直すことで、ゴルファーにティーオプションを与えることでプレーの満足度を高めることができます。

今回の記事をもとにすると仮に全長(=バックティーの長さ)が7000ヤード前後であった場合、科学的に最適化すると以下のようになると言えます。

バックティー:7000ヤード前後(7000Yが上級者のティー選びの基準点となるため)
レギュラーティー:6500ヤード前後(6600Yが中級者のティー選びの基準点となるため)
ミドルティー:5900ヤード前後
フロントティー:5100ヤード前後(5000Yが女性のティー選びの基準点となるため)
フォワードティー:4700ヤード前後

皆さんの普段プレーしているコースはどうでしょうか?

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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