月刊ゴルフマネジメント連載#6 ダニエル・キムの「組織の成功循環モデル」から学ぶ、コーチングの役割 2021.1号

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第6回はMIT(マサチューセッツ工科大学)組織学習センターの共同創始者ダニエル・キム教授が発見した「組織の成功循環モデル」から学ぶ、コーチングの役割についてです。

目次

「組織の成功循環モデル」

コーチングというと1対1の対話によるコーチングをイメージしますが、実際にはチーム全体の成長や組織としての成功をイメージするというマネージャーが多いのではないでしょうか?

MIT(マサチューセッツ工科大学)組織学習センターの共同創始者ダニエル・キム教授が発見した「組織の成功循環モデル」は、チームのパフォーマンスを左右する背後にどんな「システム」が存在しているか?を検証したもので、組織の学習に関する研究ではもっとも優れた理論の一つと言われています。

経営者やマネージャーは、日常的に結果を求められており、何よりも結果(売上や利益や来場者数)を出さなければなりません。それは組織を率いている者の共通認識であり、数字が出なければ会社は存続できないことに疑う余地はありません。

しかしこの結果を追い求めるという行為そもののが、目標が達成できない原因であるとダニエル・キム氏は述べています。

読者の皆さんの周りにも予実管理などを用いて結果を重視したマネジメントを実践しているのに、メンバーの成長や成果が上がらないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

成功を構成する4つの質

彼が提唱している「成功循環モデル」では組織を4つの質で捉えます。

周囲との関わり方やコミュニケーションといった「関係の質」が高くなると、自然と考え方も前向きになり、目的意識が高まって「思考の質」が上がり、それがメンバーの積極性や主体性といった「行動の質」を高め、それが成果として「結果の質」につながるというものです。すると成功体験がさらに関係の質が高め、これらを循環させていくことを指しています。

一方で結果が出ない組織における悪循環では、結果だけを求めるため「結果の質」を向上させようとすることから始めます。しかしなかなか成果が上がらず「結果の質」が低下することで、組織の対立、責任の押し付けあい、命令が横行するようになり、「関係の質」が低下していきます。強制することで一時的に成果が上がる場合もありますが、それはメンバーが追い詰められた状態で無理やり出した成果にすぎないので持続性に欠けます。
命令や対立が増えると、メンバーの「思考の質」が低下し、考えることをやめ、受け身になり、仕事がつまらないと感じ、その結果「行動の質」が低下するために、積極的に行動しない受け身状態になり、成果が上がらなくなり「結果の質」が低下するという仕組みです。

実際に人事領域に関する研究機関の調査によると会社員の約7割以上が組織のコミュニケーションについて課題を感じていると言われています。

私の研修で関わらせていただいた組織を見ても、成果の上がらない組織ほど社員同士のコミュニケーションの量は少ないと感じます。

「関係の質」の大切さを理解せずに、「結果の質」だけを求めてしまうと、部下との信頼関係を築けず、どんなに努力しても組織として結果を出せないという状況になってしまいます。

「関係の質」を高める

「成功循環モデル」ではグッドサイクルを生み出すために「関係の質」を高めるところからスタートします。
「関係の質」を高めるということは、相互理解を深め、お互いの違いを認め、個性を尊重し、互いの問題を自分の問題と置き換えて一緒に考えられる関係になるということです。

メンバー同士が置かれている状況を理解し、課題認識力や想像力が膨らむことで「思考の質」が向上します。
少し話はそれますが、自分の認知の外に出るためには他社との対話が必要です。要するに他者の問題を自分の問題と結び付けて考えるという思考体験そのものが成長につながるのです。メンバーの課題=自分の課題と認識することで、他者のために自発的に行動するようになり「行動の質」が向上していきます。その結果として「結果の質」が向上するということです。もちろん成果が得られれば、さらにメンバー間の信頼関係は高まり「関係の質」向上してグッドサイクルに入っていきます。

では関係性の質とは一体なんでしょうか?具体的に関係性の深度として以下のスケールを挙げてみました。①挨拶の頻度、②世間話や仕事以外での会話量の多さ、③相手の仕事の状況の理解度、④感情や気持ちを語り合える度合い、⑤他部署の人とのつながりの度合い、⑥役割や立場を超えて協力する頻度、⑦ビジョンを共有している度合い、などが挙げられます。みなさんのメンバーの関係性はこの物差しで計るとどうでしょうか?

実際にグーグル社のHR(人事)が行った分析では「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンバー間の関係性が成功するチームの要因として見られたと言っています。例えば失敗するチームでは上司だけが一人で喋りまくって、他のチームメイトがほとんど黙り込んでいるケースが多いのに対して、チームメイト全員がほぼ同じ時間だけ発言するチームは成功する確率が高いというものです。これは「心理的安全性が高いチーム」が結果を出すということです。さらに言えば心理的安全が確保された状態とは①無知だと思われる不安がない、②無能だと思われる不安がない、③ネガティブだと思われる不安がない、④邪魔だと思われる不安がないという状態です。

持続的に成果を出すリーダー

利益や売り上げを追求するために、関係性を見直すというのは、一見すると遠回りをしているように感じるかもしれませんが、「成功循環モデル」では何よりもメンバーの「関係の質」を高め「心理的安全性が高いチーム」を作ることが、成果を持続的に出していくための近道であると考えるのです。

もちろんこうした成功する組織を作るには、リーダーの意識変容だけではなく、ハードとなる人事システムの構築も不可欠です。HRM(Human Resource Managemen)システム(採用、育成、配置、評価、報酬、退出)の中に、個人の個性や強みを発揮する仕組み(ギャラップ社のストレングスファインダーなど)を取り入れたり、可視化できる評価制度を作っていくことでお互いのパーソナリティを尊重し合う関係を構築していくことも重要となります。

上司としては常にメンバーに対して「結果を出せ」と喝を入れたくなりますが、そんな衝動をグッとこらえ、まずは関係性に目を向け、メンバーの個性や強みに着目し、それを活かせる組織精度を作るということも、リーダーの役割として覚えておきたい大切なマインドセットの一つですね。

ぜひ読者のみなさんもまずはメンバーとのコミュニケーションの量を増やすこと、そして会話の中で仕事以外の話や、相手の生活や仕事の状況についてヒアリングすることから始めてみてください。

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この記事を書いた人

ゴルフ活動家
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