月刊ゴルフマネジメント連載#13 フィードバックの種類を知る

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第13回はのテーマは『フィードバックの種類を知る』です。

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前回のコラムでは、コーチングにおけるフィードバックとは何か?フィードバックと評価の違い、フィードバックが難しい理由について書きました。前回のコラムをまだご覧になっていない方はぜひそちらから読んでみてください。

今回はフィードバックを実践するというテーマで、実践のステップについて書いてみたいと思います。
フィードバックというスキルを身につけるためのステップとして私が推奨するのは

  1. フィードバックの種類を知る
  2. 自分にフィードバックを与える
  3. 他者にフィードバックを与える

という3ステップです。
今回のコラムでは1.)のフィードバックの種類について考えてみたいと思います。

目次

ポジティブ・フィードバックとネガティブ・フィードバック

フィードバックは大きく分けて2種類に分類されます。前向きで肯定的な言葉を使う「ポジティブ・フィードバック」と、指摘や率直な評価を取り入れた「ネガティブ・フィードバック」です。今回のテーマでは『心に栄養を与える』というフィードバックについてお話しているので、ポジティブ・フィードバックに限定してお話を進めていきます。

一口に前向きなフィードバックと言ってもただ褒めるだけでは効果がありませんし、あの人は何をいっても褒めるだけとなってしまっては信頼も失ってしまいます。コーチは対話を技術と考え、言葉を効果的に使うことでメンバーを動かします。ですから、対話の中でどんな言葉を使えば良いのか、どんな言葉が効果が高いのかを知っておく必要あります。

感謝

フィードバックの中で最も効果的な言葉は「ありがとう」という感謝の言葉です。

人から「ありがとう」と言われて悪い気がする人はいません。しかし一方で私達はついつい「給料もらってるんだからそれくらいやって当たり前だ」と思ってしまったり、「それはあなたの仕事なんだからすることが普通」という気持ちになってしまい、何か行動をしている人に対して「ありがとう」と言わなくなってしまいます。

実際にゴディバ・ジャパンが20代-60代の男女500名にとったアンケートによると、「ありがとう」を伝えている頻度は一日平均14.1回で、20代男性が最も多く29.4回、60代男性が最も少なく3.5回。男女ともに年齢が上がるにつれて「ありがとう」を伝えなくなる傾向があり、特に男性は50代以上になると大幅に回数が減少することが分かっています。

実際に社内でも年配男性の多くは「ありがとう」を口にする回数が減っていると思う方も多いのではないでしょうか?

そして「ありがとう」についての研究では、アメリカの大学の奨学金を集めるコールセンターの担当者に対して、奨学金を受けた生徒が直接「ありがとう」と伝えたところ、募金額が2.7倍になったことが分かっています。またある投資銀行で行われた調査では寄付をしてくれた顧客に「ありがとう」という言葉とともに寄付がどんな役に立ったかというメッセージを送ったところ、寄付額が2倍になったという調査もあります。

「ありがとう」は最も簡単で効果的なフィードバックなのにも関わらず、なぜか日本の管理職の大半を占める年配男性になると口にする回数が激減するという不思議な言葉でもあります。あなたは振り返ってみてどうですか?

そして「ありがとう」にもいくつかの種類があります。
①「結果感謝」②「行動感謝」③「存在感謝」④「逆境感謝」などが有名です。

①は頼んだことをやってくれたことに対しての感謝や、成果を上げてくれたことに関しての感謝です。
②は結果の善し悪しに関わらず、やってくれたこと、やろうとしてくれたことへの感謝です。
この①②くらいはコーチングを学ぶ意欲がある人は最低限覚えておきたいポイントです。

③はそこにいてくれるだけで有り難いという気持ちです。家族や大切な人であれば生きていてくれるだけでも有り難いという気持ちになると思いますが、そんな感謝です。
そして④は自分が望まない状態になったことに対しても、成長や気付きの機会を与えてくれたことに対して感謝しようという気持ちです。
③④に関してはちょっとやりすぎな感じがする人も多いと思うので、まずは①②を意識してみましょう。

承認

承認は「相手の存在を認める」ことです。よく「相手の意見を認めること」と間違われやすいのですが、ここでは存在を認めるという解釈で説明します。

相手の存在を認めるというのは、例えば「挨拶をする」「名前で呼ぶ」「誕生日をお祝いしてあげる」「目を見て話す」「メールや電話にすぐに返事をする」「約束の時間を守る」「発言の機会を与える」などが挙げられます。
一見すべて当たり前のことのように感じますが、皆さん自身、あるいは皆さんの回りの上司や同僚を見てみてどう思うでしょうか?

例えばあなたが会社に行って、挨拶してもらえなかったり、名前を思い出してもらえなかったり、話しかけてもスマホを見ながら返事をされたり、メールの返事がもらえなかったり、約束の時間にいつも遅刻してこられたり、そんな相手のために何か頑張ろうと思えるでしょうか?

もし相手が機械であれば挨拶しなくていいし目を見て話す必要もありませんが、私達は感情が否応なしに反応してしまう人間です。会議に呼ばれたのに一言も話さずにその会議が終わったら「私はなんでここに呼ばれたんだろう」と思うのが必然の感情です。

相手を一人の人間として承認することの意味や重要性を理解することはコーチの第一歩とも言えます。

共感

続いて「共感」です。共感は「感情的共感」と「認知的共感」に分けられます。

感情的共感とは喜怒哀楽のような感情に理解を示すことです。私達から見ると「え、そんなことで怒ってるの?」と思うことでも、その本人にとっては「怒っている」という事実はあるわけなので、怒っているということに対して「怒っているんだね」と理解をしてあげることを言います。一方で認知的共感は相手の立場や状況を理解してあげることを言います。一見似ているようですが、前者は感情への理解に対して、後者は状況への理解なので分析力が必要です。

部下や同僚が「大変だ、苦しい」と言っている時にその感情に共感を示し励ますことも大切ですが、「なぜ大変なのか?なぜ苦しいのか?」という状況を知ってあげる認知的共感の方がコーチングでは重要視されます。

コーチングとは気に入られることではない

今回のコラムを読んで「なんだコーチングは相手に気に入られれば良いのか」と思った方もいるかもしれませんが、それは本質ではありません。

確かに感謝、承認、共感を徹底すれば多くの人から好意を持たれると思いますが、コーチは好意を求めてフィードバックをするのではなく、メンバーが主体的に行動を起こせるようにサポートすることを目的にフィードバックというテクニックを使うのです。

今回のコラムを読んで共感いただけた方はまずは「ありがとう」を口にすることからは始めてみてください。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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