日本ではカート道を走行する5人乗りの電磁誘導カートが主流ですが、カート道は本来どのように設置されるべきでしょうか?
実は海外でよく見られる乗り入れを前提とした2人乗りカートの設置方法と、日本のオペレーションでは理想的なカートパスは異なります。
正しいカートパスの設置はプレースピードやコースコンディションに大きな影響を与え、それは顧客満足度やゴルファーの評判にも影響しますが、その正しい設置方法が意外と知られていないためか、日本でもオペレーションフレンドリーではないカート道をみかけるケースがあります。
あなたが行くゴルフ場でプレーの時間がかかりすぎるのは、カート道の設置方法が問題かもしれません。
海外は右側、日本は左側
最も重要なことは、カート道はコースのどちら側に設置されるべきか?ということです。
一般的に海外ではフェアウェイの右側に設置される場合が多いですが、それは全ゴルファーの90%以上が右打ちのゴルファーであり、そのうち約70%がスライサーであるという理由からです。
フェアウェイへの乗り入れが主流の海外のコースでも、ほとんどは90度ルール(ボールの真横までカート道を走行して直角にボールに向かう)が採用されているため、カート道を右側に設置することで、カートがフェアウェイを横断する距離が少なくなりコースコンディションへの負荷が軽減できますし、ボールへアクセスする距離が短くなりプレー時間も短縮されます。
一方で日本の多くのゴルフ場で採用されている5人乗りカートの場合、走行はカート道のみに限定されているため、最も手前で降りるゴルファーが降りたら、他のプレイヤーはカートで待機したり、あるいは次のショットの準備(クラブをカートから抜いてボールまで歩く)することになります。
その際にカート道がフェアウェイの右側にあると、カートを前に進めることも出来ませんし、カートから降りることも危険になり、結果的にプレーの進行を遅らせることになります。
一方でカート道をフェアウェイの左側に設置すれば、他のプレイヤーはカートを安全に前に進めることが出来るため、結果的にプレーの進行が早くなりますし、コース幅が狭い日本のコースではフェアウェイからカート道までの距離が十分に取れないため、スライスしたボールがカート道でボールが跳ねて思わぬOBになるなどプレーへの影響も増えるため、電磁誘導の5人乗りカートが主流の日本ではカート道はフェアウェイの左側を通すことが良いとされています。
景観やプレイアビリティへの影響
またコースのランドスケープ(景観)や、プレイアビリティへの影響も重要です。
プレイヤーがショットをしようと構えた時にカート道が目に入ると、そこにボールがヒットしてOBやペナルティになってしまうことが頭をよぎりますし、コースの景観としてもカート道がプレー線上に入ることは望ましくありません。
理想的にはグリーンのエッジからは18m以上離すことが推奨されていますが、スペースの関係でそれが出来ない場合はマウンドや樹木などでカート道を隠す方法が一般的です。
またティーエッジやフェアウェイエッジからは7.5m〜12m離すことが理想とされており、アクセスポイント(ティーショットやセカンド地点などでカートを止めるIP地点など)付近では7.5m、それ以外の場所は12mとなるようにフェアウェイに沿って平行ではなく、アクセスポイントにカーブを付けることが理想的とされています。
素材
カート道の多くはアスファルトかコンクリートで舗装されています。
アスファルトの利点は「価格が安い」「工期が短い」「排水性が良い(雨でも滑りにくい)」ということですが、一方で「耐久性が低い」というデメリットがあります。
一般的に18ホールのゴルフ場でカート道のアスファルト舗装をした場合2000万円〜2500万円がかかりますが、走行による劣化や、樹木の根上りなどによるひび割れや凹凸が出てきて、数年おきに部分修繕が必要になります。
一方で、コンクリート舗装はアスファルトに比べると強度が高く、ひび割れや凹凸の心配はほとんどありませんがイニシャルコストは2倍以上になります。
まとめ
もちろんバンカーの配置、池やOBとの境界で安全性に懸念があり、カートの道の設置に制約があるケースや、隣接ホールとの関係、最短距離を優先する、コストを優先するなど様々な理由はありますが、重要なことはそのゴルフ場のオペレーションに合ったカート道の設置方法を考えるということです。
今回はゴルフ場関係者の方向けにカート道の設置方法についてまとめてみましたが、一般のゴルファーの方も、こうしたゴルフ場のオペレーションの工夫を知ることで、プレーの進行が遅くなったり、コースコンディションが低下してしまう原因に気付けるかもしれませんし、会員制ゴルフ場でコース委員会などが設置されている場合は進言することでゴルフ場の品質向上に貢献できるかもしれません。