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月刊ゴルフマネジメント連載#23 外注か、内製か ―専門業者に任せれば本当に効率的なのか―(前編)

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』で、経営に関するコラムを連載させていただいております。

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第23回はのテーマは『外注か、内製か ―専門業者に任せれば本当に効率的なのか―(前編)』です。

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ゴルフ場には、専門性の高い業務が数多くあります。コース管理、レストラン、清掃、設備管理、予約システムやネットワークの保守。いずれも片手間にできる仕事ではありません。

そのため、これらの業務を外部の専門会社に委託しているゴルフ場は珍しくありません。理由としてよく挙げられるのは、「専門業者の方がノウハウを持っている」「自社で人材を抱えるより効率的だ」「固定費を変動費に変えられる」といったものです。

どれももっともな理由ですし、受託する専門会社には規模の経済が働きます。複数のゴルフ場を受託していれば、機械や資材の調達単価は下がり、人材の採用や教育も一社で抱えるより効率的に行えます。施工技術やノウハウに関しても情報が集まりやすいという利点もあります。これが外注の明確な合理性になっています。

しかし「専門性が高いから外注する」という判断は、本当にそれだけで完結するのでしょうか。今回と次回の二回にわたって、この問題を経営学の視点から整理してみたいと思います。

目次

なぜ企業は、すべての仕事を外注しないのか

まずは素朴な疑問から始めます。市場に優れた専門業者が存在するのなら、企業はあらゆる業務を外から買ってくればよいはずです。それなのにゴルフ場以外の業種においても、現実の企業は多くの仕事を自社の中に抱えています。なぜでしょうか。

この問いに正面から答えたのが、イギリスの経済学者ロナルド・コースです。論文『企業の本質(The Nature of the Firm)』の中で、市場を使って取引すること自体にコストがかかるから、企業という組織は、そのコストを避けるために存在する、という見方です。コースは後にノーベル経済学賞を受賞しています。

この考え方をさらに体系化したのが、アメリカの経済学者オリバー・ウィリアムソンです。ウィリアムソンは、コースが提唱した「取引コスト」の大きさを左右する要因として「資産特殊性」「不確実性」「取引の頻度」を挙げました。資産特殊性とは、その取引のためだけに必要となる特殊な設備や知識がどれだけあるか、ということです。相手を簡単に取り替えられない取引ほど、事前の交渉や事後の監督に手間がかかります。

自社の中でやるか、市場から買うか。この境界線は、業務の専門性の高さだけで決まるのではなく、取引コストの大小によって決まる。これが経営学でいう「企業の境界」という考え方です。

請求書には現れないコスト

では「取引コスト」とは具体的に何でしょうか。外部にサービスを委託するとき、私たちは委託費だけを払っているわけではありません。

委託先を探す、複数社を比較し見積の中身を精査する、契約条件と仕様を決める、自社の状況や要望を相手に伝える、品質を監督し評価する、前提が変わったときに仕様変更を交渉する、 トラブルが起きたときに対応する。これらにはすべて人と時間が費やされています。しかしそのどれもが請求書には一行も現れません。表に出ないからこそ、経営判断から抜け落ちやすいコストだといえます。

誤解のないように加えると、これらは無駄な作業という意味ではありません。委託先と認識を合わせる作業は、むしろ必要な仕事です。ここで申し上げたいのは、それが「タダではない」ということです。人員が限られたゴルフ場では、経営者や支配人などの管理責任者の時間そのものが希少な経営資源です(※1)。その時間がどこに使われているかは、金額と同じ重みで見ておく必要があります。

コース管理で考えてみる

コース管理を例に考えてみます。管理会社に業務を委託すれば、人材の採用と教育、機械の整備、資材の調達といった負担を専門会社に任せることができます。特に人手不足が深刻化する現在では、これは決して小さな価値ではありません。

一方で、委託して終わりにならない領域も残ります。たとえば次のような判断です。
グリーンのスピードとコンパクションをどの水準で維持するのか、競技会や大会の前にどこまでコンディションを上げるのか、樹木・排水・散水設備にいつどの順番で投資するのか、目先の管理費と十年先のコース品質をどうバランスさせるのか、これらはいずれも管理会社では決められません。会員の期待値、ビジターの単価、年間の収支計画といった経営情報と結びついているからです。逆にクラブ側だけでも決められません。芝の生育状況や作業工数という現場情報が必要だからです。

つまり「双方が情報を持ち寄って擦り合わせる」という作業が必ず発生します。この擦り合わせこそが取引コストの中身です。

やや極端に言えば、委託費が年間で数百万円下がったとしても、支配人とコース管理責任者が月に何度も打ち合わせと確認に時間を取られ、仕様変更のたびに交渉が必要になるのであれば、その差額は目に見えないところで相殺されているかもしれません。(これは仮の想定であり、実在の事例を指すものではありません)

レストランでも構図は同じです。運営会社に委託すれば調理人材の確保は楽になりますが、メニュー構成、価格改定、コンペ対応、繁閑差への人員配置といった論点は、クラブ側との調整なしには決まりません。

前編のまとめ

外注か内製かは、「外注費」と「自前でやった場合の人件費」を並べて安い方を選ぶ、という単純な比較では決まりません。見積書に書かれた金額の外側に、探す・決める・伝える・見張る・交渉するというコストが確実に存在するからです。

逆に言えば、仕様が明確で、品質の判定基準がはっきりしていて、相手を取り替えやすい(スイッチングコストが低い)業務ほど、取引コストは小さくなります。清掃や設備の定期点検が外注になじみやすいのは、専門性が高いからというより、この条件を満たしやすいからだと考えられます。

さて、ここで次の問いが出てきます。取引コストまで含めて計算してもなお外注の方が安いのであれば、すべて外に出してしまえばよいのでしょうか。

実は、そこにはもう一つ、金額では測れない重要な問題があります。効率の物差しで正しく見える選択が、十年後の競争力の物差しでは違う答えになることがあるのです。次回はその点を、競争優位と能力蓄積という観点から外注化を考えます。

※1 月刊ゴルフマネジメント連載#19 限られた人材で組織を回す ―シンプル構造とドラッカーに学ぶ役割設計―

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この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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