「ゴルフ場をゼロから作ると、いくらかかるのか」
先日、米国大手ゴルフメディアのソーシャルメディア責任者がこのテーマでSNSに投稿し、話題を集めていました。答えを先に言うと、彼らの投稿では総額500万〜5,000万ドル(=約7.5億〜75億円。本稿では1ドル150円で換算します)と述べられていました。
ご存知の通り、日本のゴルフ場の多くは1980〜90年代のバブル経済期に建設され、1990年代以降は新設がほぼ途絶えていますから、現役のゴルフ関係者でも「一から作る費用」を知る機会はありません。
実際に筆者もコース改修のプロジェクトマネージャーとして、オーナーやコース委員会から「工事の費用感が全く分からない」「見積もりが出てきても妥当な金額かどうか分からない」という相談を数多く受けてきました。
そこで今回はこの投稿の内訳に、日本の公的データと筆者の実務経験を突き合わせながら18ホールのゴルフ場建設費用を算出し、それをベースに最後に「既存コースの修繕費」を推論してみたいと思います。

①土地(200万〜1,000万ドル=約3億〜15億円)


紹介したSNS投稿にある通り18ホールに必要な標準的なグレードのゴルフ場建設用地は150〜200エーカー(約60〜80ヘクタール)が一般的です。
一方で、上の画像のように同じ18Hのゴルフ場でも120ヘクタールあるところもあれば、その半分以下の52ヘクタールのゴルフ場もありますから、ゴルフ場の土地の広さといっても実にさまざまです。
この投稿に書かれた1エーカー1万〜5万ドルという米国の相場は、1haあたり約370万〜1,850万円に相当しますが、日本ではどうでしょうか。
日本不動産研究所の調査によれば、山林素地(用材林地)の全国平均は10aあたり約4万円、つまり1haあたり約41万円ですから、仮に80haの山林を取得しても素地代は3千万円台。実は「土地そのもの」は米国よりはるかに安いのです。
一方で2026年の地価公示では住宅地の全国平均は約14.5万円/㎡ですから、この単価でで計算すると60haで約870億円。
日本のゴルフ場が山林にしか作れない理由がよく分かりますし、その山岳地形のツケは次の造成費に回ってきます。
先輩方に聞いた話ではバブル期に作られたゴルフ場でも土地の買収価格は高くても数億円程度だったようですから、やはりゴルフ場建設費用の中では土地の値段というのはそんなに大きな構成比を占めないというのが業界認識のようです。
②設計(投稿では5万〜20万ドル=約750万〜3,000万円超)

SNS投稿に書かれた金額は、私の実務感覚ではマスタープラン(初期コンセプト)の作成費用のように見えます。
設計者への依頼は実際には大きく「①マスタープランの作成」「②グレーディングプラン(造成計画)の作成」「③設計管理(工事現場での管理業務)」の三段階に分かれており、①〜③の総額は中級クラスのアメリカやイギリスのデザインファームで1億円程度、世界トップ100に名を連ねるトップファームならその2〜3倍、あるいはそれ以上になることもあります。
③造成工事(投稿では200万〜400万ドル=約3億〜6億円)

この金額は造成の工事費のみで、資材費が含まれていないように見えます。
試しに国土交通省地方整備局の設計材料単価(2026年3月適用)を使って、主な資材だけ積み上げてみましょう。
グリーンの床構造に使う砂(クッション用砂 約3,400〜6,300円/m3)は、グリーン面積2万㎡×厚さ30cmで6,000m3、約2,000万〜3,800万円。その下の砕石層とカート道の路盤に使うクラッシャーラン(約3,800〜9,400円/m3)が計5,000m3で約1,900万〜4,700万円。さらに山岳造成で不足土を3万m3購入すれば(山土 約3,000〜6,700円/m3)これらの砂や砂利だけでも約1億〜2億円かかることになります。これら主要資材だけで2〜3億円規模となり、これにさらに運搬費や業者利益が乗りますから、実際の造成費は最低でも投稿の2〜3倍、6億〜18億円を見込むべきというのが筆者の実感です。
④散水・排水設備(投稿では合計約100万ドル=約1.5億円)

7,000ヤード級のコースでは、本管と枝管を合わせて散水管・排水管がそれぞれ約20km地中に敷設されます。管材も先ほどの設計材料単価から試算してみましょう。
散水用の高密度ポリエチレン管(PE100)は呼び径50で1本(5m)7,340円、呼び径100で23,680円、m単価で約1,500〜4,700円。本管4km+枝管16kmと仮定すると管材だけで約4,000万〜8,000万円になります。
排水用のポリエチレン暗渠管は呼び径100で1本(4m)2,600円、呼び径200で5,200円とm単価650〜1,300円程度で、20km分で約1,500万〜2,500万円。トレンチに充填する砕石約3,600m3を加えると、材料だけで約7,000万〜1.4億円。
つまり投稿の「工事込み1.5億円」は、日本では材料費だけで届いてしまう水準で、さらにこの価格は「スプリンクラーヘッド」や「ポンプ場」、「制御システム」、掘削・埋設の施工費は全て別途ですから、少なくとも3-5億円というのが実際の感覚に近いと思います。
⑤芝(投稿では50万〜150万ドル=約7,500万〜2.25億円)

これも日本の感覚では安すぎるように見えます。
前述の設計材料単価では野芝・高麗芝(半土付き)ともに620円/㎡。張芝では材料費とほぼ同額の施工費がかかりますから、実質約1,240円/㎡です。
仮に張芝面積を50万㎡とすると約6.2億円と、投稿の上限の3倍近くになります(※種子吹付等の工法で圧縮可能。あくまで張芝で揃えた場合の試算です)。しかも植えて終わりではなく、生え揃うまで12〜18カ月の養生が必要という点は日米共通です。
⑥クラブハウス(100万ドル〜=約1.5億円〜)と年間維持費(約100万ドル=約1.5億円)

高級仕様のハウスは2,000万ドル(約30億円)以上にもなりますし、正直家づくりと同じで、かけようと思えば青天井でいくらでもかけられます(苦笑)。さらにコース全体の年間維持費約1.5億円・人件費比率56%という水準は、日本のゴルフ場経営の実感とも整合的です。
まとめ:18ホールをゼロから作った場合の試算(クラブハウス除く)
実際に私もゼロからゴルフ場を作ったことがないので、あくまでも公的な機関から発表されている建設資材単価などによって見積もると、18Hのゴルフ場の建設費用は最低でも30億円程度と推測されます。
一方で修繕や改修だと安いかと思いきや、実際には既存エリアの養生費用が発生したり、既存エリアを残しながら工事を進めるために工程が複雑にかつ短納期になるため、新設と改修で費用があまり変わらないという場合もあるようです。
| 項目 | 18ホールあたり | 1ホールあたり |
|---|---|---|
| ①土地(山林80ha・素地全国平均ベース) | 約3,000万円〜 | 約170万円 |
| ②設計(マスタープラン〜設計管理) | 約1億〜3億円 | 約1〜2億円 |
| ③造成工事(資材費・運搬費込み) | 約6億〜18億円 | 約3,300万〜1億円 |
| ④散水・排水設備(材工・付帯設備込み) | 約3億〜5億円 | 約1,600万〜2,700万円 |
| ⑤芝(張芝〜種子吹付) | 約3億〜6億円 | 約1,700万〜3,300万円 |
| 合計 | 約13億〜32億円 | 約7,300万〜1.8億円 |
修繕費を推論する
日本のゴルフ場関係者にとって切実なのはやはりコースの修繕費ではないでしょうか。
上記から筆者が単純試算すると、散水・排水だけのリフレッシュでも管材だけでも約1億円、施工費と既存管の撤去処分費を含めれば18ホールで数億円規模という計算になります。
また1ホールまるごとの改修なら、造成・水回り・芝を積み上げて1ホール1億円超が視野に入り、グリーンコンプレックスだけでもその半分の5000万円というのが概算金額になります。
ゴルフ場事業者はこうした予算感をもつことで、設備やコースを維持するための日常的なオペレーションへの投資効果の検証や、修繕の投資効果の目安になります。
改修工事のような大型投資の前に、まずは改修を必要としないような日頃のメンテナンスの合理性にも目を向けるべきです。
・単価出典:国土交通省中部地方整備局 土木工事設計材料単価表(2026年3月適用)、日本不動産研究所「山林素地及び山元立木価格調」(2024年3月末)、2026年地価公示、暗渠排水管・水道用PE100管の各メーカー設計価格表(2025年度、税別・材料のみ)、愛知県公共工事単価ベースの補償費試算資料。

