以前にも大学で体育(ゴルフ)の授業をやっているということを書いていましたが、その中で時間を作ってキャリアに関する話を入れるようにしています。
約1時間の話を文字でまとめていますので、長文になりますがご容赦ください。
大学生向けの内容ですが、もし今キャリアに悩んでいる大人の方がいたら、読んでご意見を頂ければ嬉しいです。
いま私は好きな仕事をしています
今は日本とタイを行き来しながら、ゴルフレッスンや、セミナー、それからコンサルティングの仕事をしています。
全部好きなことだし、いつでも好きな場所に行けます。
現代は嫌な事を我慢してやる時代じゃない
社会に出るとたくさん嫌な事を経験するかもしれません。
でも私たちが生きる時代は嫌な事を我慢してやらなくても良い時代になっていると思います。
みんなはこれから大学を卒業して、就職をすると思います。
就職すると楽しい事だけではなく、大変な事も、嫌な事も経験するかもしれません。あるいは人間関係に悩む事があるかもしれません。
私の周りでも仕事のストレスや人間関係に悩んで体調を崩してしまった人がいます。
みんなには社会に出る前に、悩んだ時の考え方の一つとして、少しだけ先輩の私から皆んながまだ知らないであろうこれからの働き方の話をします。
ハイパーチェンジエイジ
まず今ってどんな時代か。メンタルヘルスの世界では今は超高速変化時代「ハイパーチェンジエイジ」と呼ばれて言います。
インターネットを主とした技術革新で、いま人類がかつて経験したことのないスピードで社会は変化していて、その変化がストレスや不安になっている人が多いんです。
社会の変化って何か?というと、新しい仕事が物凄いスピードで次々に生まれて、みんなの周りが変わっていくということです。
具体的にいうとネットショッピングが生まれたらデパートの数が減りました。Youtubeが普及したらテレビを見る人が減りました。という具合です。
近年の社会の変化というのは、産業の代謝がものすごく速くなっているということです。
ある研究データでは今後15年で45%の仕事が無くなる(その分新しい仕事も生まれる)と言われています。
だから未来の予測は過去に比べて非常に難しくなっています。
例えば江戸時代は約300年間に渡って身分制度があり、仕事も世襲する事が多かったので将来について考える必要はありませんでした。農家に生まれたら必然的に農業を覚えてそれを死ぬまでやれば良かった。しかも寿命が40才程度だったと言われている時代ですから、選択がないというと不自由に思えるかもしれませんが、将来を考えるという感覚さえも無かったかもしれませんね。将来に悩まないというのは現代よりも幸せですか?
高度成長期は未来が予測しやすい時代だから未来に向けた努力ができた
戦後の日本は安い人件費、勤勉な国民性を活かしてモノづくりで繁栄しました。日本の車や家電が世界中で使われているのを見ると分かりますね。
工場がたくさんできて、そこで働く生産者は言われた事を言われた通りにやる「勤勉」や「従順」さが求められるので、教育もそれに合わせて行われました。暗記中心の受験勉強や、前ならえや組体操とか分かりやすいですね。
これがみんなのお祖父さんやお婆さん、お父さんやお母さんが受けてきた教育です。
そして「勤勉」や「従順」な人へのご褒美として国はサラリーマンに対して社会保障を充実させました。
この従順な労働力に対してご褒美をあげる事で栄えた時代は1945年の終戦から90年のバブル崩壊まで約50年以上続き、2016年の人口減少を迎えるまではそれがずっと続くと皆んな思っていました。
要するに戦後も昭和から平成半ばくらいまでの約70年くらいは教育や労働の価値観はあまり変わらなかったんです。
しかし時代が変わったからといって、そうじゃない事がわかっても人間は急には変われません。
今でも従順に働けばご褒美があるかもと思っているし、生活には、家、車、保険、などのコストの高いものが必須と思っている人たちが大勢います。
だから嫌な上司や先輩がいても、仕事が退屈でも、我慢して会社員を長く続けて、出世していけば明るい未来があるよ。とほとんどの人は言います。
でもそれは本当でしょうか?
先輩や先生や親が嘘を言っているかっていうとそうじゃないんです。
未来が予測しやすい時代、すなわち未来が突然変化しない環境下では、努力の予想がしやすかったんです。
良い大学に入れば良い会社に就職できるとか、こういう仕事をやれば出世できるとか、こういう会社が伸びるとかっていうことが予想しやすかった。
だから、こういう努力をすれば良いんだって皆んなが共通の認識を持てた時代でした。
でも今はどうでしょうか?
まさか個人が動画配信することが仕事になるとか、ゲームがe-sportsと言われてプロとして仕事になるとか、ドローンの操縦が仕事になるとか、人工知能が人の仕事を代替するとか、誰か予想できたか?
世界一の車メーカーに就職しても、車に変わる新しい技術が登場したら、その会社はなくなるかもしれません。
だから今何を勉強したら良いの?という問いに答えられる大人は少なくなってきています。
ご褒美が明確じゃないのに頑張るというのは誰にでも出来ることじゃないですよね。
「グローバル化」と「長寿化」
どんな仕事が良いのかという議論ではなく、ちょっと視点を変えて、これからどういう変化が世の中に起こるのかということを考えてみましょう。
これから起こるのは「グローバル化」と「長寿化」です。
どちらもやはりインターネットを中心とした情報産業が影響しています。
世界中で国境を超えた人の行き来が増加しています。これは移動コストが下がったからです。
実際に私たちが明日海外に行こうと思えば東京や大阪に行くくらいの金額で行く事ができます。
なぜ移動コストが下がったか、飛行機を例にいうとインターネットのみで予約を受け付けるLCCが台頭しました。彼らはカウンターを持たずネット上だけで予約から決済までを完了します。さらに稼働率が高くて燃料費が安い比較的小さい飛行機で短距離路線網を繋いでいます。これもネットの普及がなければ実現しなかったビジネスです。
ここから考えられることは、これから世界中で人の行き来は増加します。実際に海外の情報をネットで探せば電車の乗り方から銀行口座の開設法まで分かります。移動のコストや情報コストが下がった事で、国境の壁も下がりました。世界はもっと小さくなり、グローバルになるということです。
そしてもう一つが長寿化です。これもテクノロジーで医療が飛躍的に進歩しています。遺伝子情報から病気の予防ができたり、カメラの高精度化でこれまで発見できなかったような病気も見つけられるようになりました。薬も人工知能によってどんどん良いものが生まれます。
食べ物もどんどん良くなっています。体に良いものだけを食べるようになっているし、健康に関する情報もインターネットでどんどん拡散されています。
人間はより長生きになって、みんなは100才以上まで生きると言われています。
ちなみに1900年の日本人の平均寿命は44才でした。それが100年後の2000年には81才とほぼ倍になっていて、その後もどんどん伸び続けています。
将来のために今を犠牲にするのは古い考え方?
さて、こんな時代になりそうだとどんな仕事をすれば良いのでしょうか?
答えは簡単です。いま好きな事をすれば良いんです。
この話を説明するのに少し話題を変えますが、経営学ではファイナンスという学問があります。ファイナンスと聞いてパッと連想されるのはお金だと思いますが、ファイナンスは今とは価値を正しく計る方法として使われる学問です。
そんなファインス理論の中では、今すぐ受け取ることができる100万円と10年後に受け取る100万円とでは、今受け取る100万円の方が「価値が高い」と考えます。
それはなぜか、時間によってお金の価値は高まるからです。例えば100万円に利息が3%ついたとすると10年後には130万円以上になります。これを「時間価値」と言いますが、お金とは「時間」によって増えたり減ったりするものなんです。
この理論で考えた時に、私たちの10年後の1年と、今の1年とでは、どちらが貴重と言えるでしょうか?
10年後が予測しやすい世界であれば、今の1年を10年後に投資することも良いでしょう。
しかし10年後が予測しにくい世界であれば、今の1年を今、あるいは来年、3年以内の近い未来のために使う方が確実と言えませんか?
それは何故か、理由は述べてきた中で3つにまとめられます。
労働寿命が伸びる + 産業のサイクルが加速 = 一つの仕事にこだわらなくて良い
私たちの少し前の世代は60才で定年退職していました。今は65才、おそらくまだ伸びると思います。これは健康寿命が伸びた事、そして少子高齢化によって年金制度に無理が生じていて支給開始年齢を遅らせる必要が出てきた事が理由です。
昔は20才から60才までの40年間働けばよかった、しかもその間には産業の変化はほとんどなく一つの仕事を一つの会社で生涯続ける終身雇用が成り立っていました。
しかし今はどうでしょうか?仮に私が今よりも10年遅い75才で年金をもらえるとしたら55年間働くことになります。しかも産業代謝が活発な時代なので、この55年の就労人生のなかでも何度も違う職種や会社で働くことになります。先ほど挙げた45%の仕事が無くなる(あるいは変化を求められる)という数字が大げさだとしても、55年間働くことを考えると、遅かれ早かれ転職する可能性た高いと言えるでしょう。一つの仕事や会社にこだわる必要なく、続ける我慢よりも、捨てる決意が重要になるかもしれません。
生活コストが下がる + 価値創出手段の多様化 = 賃金にこだわらなくて良い
2つ目は生活コストが下がることです。例えば私は前に車を保有していましたが、毎月7万円くらい維持費にかかっていました。今はカーシェアとタクシーを使っているので2万円くらいに下がりました。しかも海外の物価の安い国に行けば更に生活費は下げられますし、日本でも田舎で空き家に住めばただ同然で住める場所は山ほどあります。保険もインシュアテックが普及すれば今よりもかなり安く加入できることになると予測できます。
ちなみに家(5000-6000万)、車(3000-4000万)、保険(2000-3000万)は人生の3大支出と言われていて生涯賃金の6割以上をこの3つで消費しています。
携帯の通信料も格安SIMに変えたら1/4になりました。娯楽も映画はストリーミングで見るし、本は電子書籍になってほとんどお金がかからなくなりました。
そして仕事も会社に依存しなくて良い時代です。個人がYoutubeやブログで数百万円の月収を得たり、フリマアプリで個人商社のように不用品や輸入品を売ったり、クラウドソーシングという外注仕事をインターネットで受注することも出来ます。
極論に聞こえますが、生きるための収入を得るくらいは難しいことではないのかもしれません。
学習コストが下がる + コミュニケーションコストが下がる = スキルや人間関係にこだわらなくて良い
それでも尚、私には「知識」も「経験」も「技術」も「人脈」もないと心配する人がいるかもしれません。でも心配いりません。今は教育も無料で受けられる時代です。
なので、もし何か学びたい事があればインターネットで検索してみてください。様々な専門家が知識や情報をシェアしてくれています。話してみたい人がいたらその人のSNSを覗いてみましょう。コメントしてDMを送れば会ってくれるかもしれませんし、ビデオチャットなどで時間をもらえるかもしれません。
もちろん1日で英語が喋れるようになったり、1日で映像編集が完璧にできるようになるわけではありません。しかし学ぶ意欲さえあれば、そこにコストはかからないという事です。すなわちお金を準備する期間は不要で、今すぐにでも始められます。
家族や友人がいるからといってそこにとどまる必要もなくなるかもしれません。
先ほどにも言いましたが移動の費用は下がっていますし、一昔前なら手紙や電話だったコミュニケーションも今はビデオチャットが無料で出来るし、ARやVRで立体的になりより身近に感じることもできるかもしれないし、新しい友人を作るのも昔よりも簡単だと思います。
好きな仕事をすれば良い
一つの仕事にこだわらなくて良い + 賃金にこだわらなくて良い + スキルや人間関係にこだわらなくて良い = 好きな仕事をすれば良い。ということなのです。
さて、ここからじゃ実際にどうしたらいいの?という話をしてみたいと思います。
たくさんの点を打つConecting the dots
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提案したキャリア論「計画的偶発性理論」をもとに考えてみます。
「計画的偶発性理論」はざっくりいうと、
・人生の8割は偶然によって決定される
・幸運なキャリアを歩む人たちを研究すると偶然を計画的に引き寄せている
・偶然を引き寄せる人には好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心の行動特性がみられる
・未来よりも今が重要
という内容です。
そして、これはアップルの創業者スティーブジョブスも同じようなことを言っています。繰り返しですが、将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。
要するに、将来のために今を犠牲にするのではなく、今やっていることを後で過去や未来の出来事とつなぎ合わせていくという事が重要なのだという事です。
ちなみに私はかなりシンプルに「その時にやりたいことを全力でやる」という解釈をしています。
キャリアは偶然が組み合わさり計画的に作られていく
実際に私も人生の中でいくつかのチャレンジをしてきました。
例えば15才の留学です。不安もありましたが、勇気と好奇心だけで飛び込んでみたら多くの知識や経験が得られました。
そして起業もそうです。苦労もたくさんありましたが、多くのことを学びましたし、サラリーマンをやっていたら出来なかったであろう経験もたくさんしました。
31歳で入学した大学院もそうです。仕事との両立で不安がありましたが、学ぶ姿勢を学んだ素晴らしい体験でした。
そして38歳で体験した海外と日本のデュアルライフ(2拠点生活)。
もちろん何か新しいことをするというのは失うものもありますが、点は増えるばかりです。
そしてそれらの経験が繋がって、コーチング、マネジメント、海外での仕事、研修や講師の仕事など、新たなキャリアが生まれました。
その時はそれを目標にしていた訳ではありませんが、あとでこうした行動の跡が繋がり、新たな人生が作られていくという体験をしています。
あなたの人生に我慢や不安は要らない
ながながと話をしてきましたが、もっとも言いたかったことは、
好きなことを一生懸命やりましょう。
それが将来何に役立つかは今分からなくても良いのです。
あなたの人生に我慢や不安は要りません。
ということです。
もし今「将来のために」と思って何かやりたいことを我慢しているんだとしたら、今すぐに今やりたいことをやりましょう。それがあなたの人生なのだから。
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