月刊ゴルフマネジメント連載#15 コミュニケーションスキルとは何か?

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第15回はのテーマは『コミュニケーションスキルとは何か?』です。

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自分の意見や思いがうまく相手に伝わらない。あるいは相手の言ってることが理解できない。こうしたコミュニケーションの問題は職場でしばしば人間関係のトラブルの元になり、職場のこうしたコミュニケーションの問題は職場環境を悪化させ、それが生産性やサービスの低下に繋がります。

リクルートの調査によると社会人の58%がコミュニケーションについて苦手意識があると回答している一方で、企業が就労者に求めるスキルの1位もコミュニケーションスキルで85.7%の企業が採用時に重視するスキルと回答しています。

実は2016年に米国で実施されたLinkedInの調査でも、コミュニケーションスキルは論理的思考や創造性を抑えて雇用主が最も求ているソフトスキルのトップリストになっており、世界共通の能力とも言えるのではないでしょうか。

目次

コミュニケーションの構成要素は「アウトプット(伝える)」と「インプット(理解する)」「リレーションシップ(関係を作る)」

コミュニケーションとは二者間以上の双方向においての気持ちや意見などの意思疎通を行うことを言います。
「私はこう思う」という意見表現はもちろん、「私は怒っている」などの感情表現もコミュニケーションです。

こうした伝える手段として用いられるのが「話す」「書く」と言ったバーバル(言語)コミュニケーションや、「表情」や「振る舞い」で伝えるノンバーバル(非言語)コミュニケーションです。

自分の意見や感情を伝える一方で、相手の意見や感情を理解するというのもコミュニケーションです。コーチングでは特に相手の意見や感情を理解する傾聴に代表されるインプットのスキルが重視されがちですが、人材育成という観点で見ると「教える(ティーチング)」「指示する(インストラクション)」際にはアウトプットのスキルも重要になります。

さらに近年ではコミュニケーションスキルの中に「伝える力」「理解する力」に加えて「関係を築く力」も重要視されており、関係構築力までを含んだコミュニケーション能力はソーシャルスキル(社会的能力)と呼ばれるケースもあります。

(図:コミュニケーションスキル構成要素)

どんなに論理的に雄弁に語れる人でも他者から嫌われていては言うことを聞いてもらえないし、どんなに人が良い聞き上手でも信頼がなければ真実を聞かせてもらうことは出来ません。

コーチングでは関係構築の手段としても#13で紹介したような感謝、承認、共感などのフィードバックが使われます。今回の記事を読んだ後に読み返していただけるとコミュニケーションとコーチングの繋がりや、コーチングとはコミュニケーションを使った人材育成の手法であるということが理解いただけると思います。

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コミュニケーションスキルとは意図したように伝える(受け取る)技術

よく上司から部下へのミスコミュニケーション(情報伝達の際に発信側の意図と受信側の解釈に相違がある状態)であるのが、「そんなつもりで言ったんじゃないのに」「怒ってないのに怒られたと受け取られた」「真剣に話したのに軽く受け取られた」というケースです。

アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンによって提唱された「メラビアンの法則」では「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」の割合で人の情報理解に影響を与えることが分かっています。

どんなに丁寧に説明しても、表情がこわばっていたり、声のトーンが低ければ不機嫌に言われたように伝わってしまいますし、その一方で重要な話や緊急度の高い指示をしたのに緊迫感が伝わらなかったということもあります。

私達は用件さえ伝えれば、それが相手に伝わると誤解しがちですが、受け取る相手は言葉の内容以外にも、表情や身振り手振り、場所、声のトーンなどからもその情報を受け取っているということです。

ですから「意図しないように伝わってしまった」とか「ちゃんと伝わっていないと感じる」という場合には、表現や言葉のチョイスが適切だったかを振り返ってみるといいでしょう。

逆も然りで、私達は相手の態度や声のトーンなどから情報の真意を読み取ることも必要ですし、私達が実際にそうであるように自分の感情や意見を上手に表現している人は多くないことからも、自分が受け取った情報が正しくない可能性についても常に考える必要がありますし、自分と違う意見を受け入れるといった他者受容力も重要になります。

また当然ですが関係性の上に成り立つコミュニケーションもあります。関係性については#6の「関係の質を高める」にも書きましたが、挨拶や世間話などの他愛もない話が実はコミュニケーションでは重要だったりするのです。

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このように伝えることや、理解することも、そうした関係性を作ることも、コミュニケーションという能力に裏付けられた技術と言えます。

コミュニケーションの複雑化という悩み

近年では、技術革新や労働環境の変化によってメールやチャットなど表情や声のトーンなど非言語が伝わらないコミュニケーションが増えていますし、コロナ禍でビデオ会議やリモートワークの機会の増加に伴って、コミュニケーションの総量が低下しています。
その結果、関係性を構築する上で重要な挨拶や世間話の頻度が減り、他者の感情や気持ちへの理解が弱まっていると感じます。

例えば相手の状況が見えない環境下では、メールの返信が数日遅れるだけで「無視された」「嫌われている」「自分の存在が軽んじられている」などと受け取られてしまったり、忙しい合間を縫って端的に返信したメールに対して「冷たい」「そっけない」と取られてしまったりという具合です。

こちらが意図していなくても、そのように相手に取られてしまうのがコミュニケーションの難しさであり、そうならないように一手間加えるという行為がスキルと言えるのではないでしょうか。

私も前職では全国に散らばるゴルフコーチ達と遠隔で仕事をしていたので、コミュニケーションに悩み、当時のメンターに相談したり、実際に送ったメールの内容を見てもらい率直に相手にどう伝わっているかといった客観的なフィードバックをもらった際に「この書き方はちょっと相手に失礼じゃないですか?」とアドバイスされてショックを受けた経験があります。

その頃の悩みや教訓がコーチングに興味を持つきっかけになったのですが、それだけ多くの人がコミュニケーションに悩んでいるということだと思います。

受け取る相手次第なので完璧も正解もないコミュニケーションですが、ちょっとした工夫や努力で円滑な人間関係を築けるという示唆でもありますので、引き続き皆様と一緒に考えていけたらと思います。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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