月刊ゴルフマネジメント連載#23 自分勝手な育成になっていませんか?部下への正しい期待のかけ方

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第23回はのテーマは『自分勝手な育成になっていませんか?部下への正しい期待のかけ方』です。

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先日顧問先の部門長を集めた会議で「どんな部下が理想的ですか?あるいはどんな部下を評価したいと思いますか?」と質問したところ、「自分で考えて自分で行動できる」「主体的に行動できる」という答えが返ってきました。皆さんも私達がいちいち指示しなくても「自分で動ける部下」を望んでいるのではないでしょうか?

日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターで、早稲田大学ラグビー蹴球部の監督として大学選手権を2年連続で制覇し、現在はグローバルリーダーを育成を支援するコーチの中竹竜二さんが書いた「自分で動ける 部下の育て方 期待マネジメント入門」の内容を紹介しながら、上司の正しい期待のかけ方について学んでいきましょう。

目次

「部下に成長してほしい」はあなたの都合

部下の育成で最もありがちなのが、会社の目標や、自分の価値観を押し付けてしまっていることです。中竹さんの本の中でも「自分のパートナーには期待するのに、他人のパートナーに期待したいのはなぜか?」「自分の部下には期待するのに、他部署の部下に期待しないのはなぜか?」という問いが出てきます。

要するに私達は本人の成長を望んでいると言いながら、「なぜ成長してほしいのか?」という問いを繰り返していくと「会社の方針だから」「自分の評価が下がるから」「自分の仕事の達成や満足感を得るため」といった利己的な理由が隠れているものです。要するに成長してもらわないと困るのはあなたであって、部下本人ではないのです。この自分の期待と部下の期待との間にあるミスマッチこそが、育成の難しさなのです。

あなたがオーロラを見たいと思って遥々とアラスカまで足を運んだとしてもオーロラはあなたの願望に合わせて姿を見せるわけではないですし、手塩にかけて大事に育てた花が必ずしもキレイに咲くとは限らないし、あるいは子供が親の期待通りに育たないのも同じかもしれません。人の育成とは私達がどれだけ期待をかけても、実際に行動するのはあなたではなく他者であり、育成にはこうしたあなたの都合を手放すというマインドセットが重要です。

正論を連呼しても部下は変わらない

もちろん他者の成長を願うことは悪いことかというとそうではありません。スポーツ心理学でも選手への声援や応援がパフォーマンスを上げることが分かっていますし、親や上司が部下の成長に期待することはある意味で自然といえる感情です。

しかし私達はそうしたかけた期待に反して成長しない相手を見ると、思わずそれを相手の責任にしてしまいます。「いつまでたっても英語が話せるようにならないのは勉強時間が足りないからだ」「営業成績が上がらないのは工夫が足りないからだ」という具合です。確かにそれは正論かもしれませんが、正論の欠点は「反論を許さない」ということです。正論を言えば言うほど相手は発言しにくくなり、コミュニケーションの量は低下して、指導者の一方的な発言が増えてしまいます。

上司や指導者の役割は正しいことを言うことではなく、相手を変化させ、それを結果につなげることです。正論で相手の行動が変わるのであればそもそもコーチングなんていらないわけですから。

正しい期待のかけ方

そもそもなぜ私達の育成は「期待外れ」に終わるのでしょうか?

「期待」の意味を辞書で調べると、「あることが実現するだろうと望みをかけて待ち受けること。当てにして心待ちにすること」「よい結果や状態を予期して、その実現を待ち望むこと」と出てきます。この”期して待つ”について考えてみましょう。

期待しているゴールを明確にする

著者はそもそも部下と上司が正しい共通ゴールを持っていないということを主張しています。例えば「売上は気にしないからとにかく件数を回れ」と言っていたのに実際に売上が上がらないと「気にしなくていいとは言ったがゼロはないだろ。結果を出せ」と言ってみたり、あるいは「結果が全てだ」と言っていたのに後になって「あのやり方はないだろう」と言ってみたりという具合です。

期待しているゴールは「成果」か「プロセス」か「態度」かを双方が明確に把握していないということが期待外れになってしまう原因になります。

相手のスタイルを重視する

相手の興味や長所を無視して、嫌いなことや苦手なことを一生懸命やれというのもあまりにも身勝手な態度です。長所や得意なことを把握するのももちろん大切ですが、苦手なことや嫌いなこと、やりたくないことを把握することで、その人のスタイルが見えてきます。例えば「人に指示されるのは嫌いだが自分で決めたことはやり通せる」「人と協調するのは苦手だが1人でできる作業は得意」「新しいことには積極的だが、ルーティーンワークは苦手」「メールやチャットは得意だが対面での会議は苦手」というのもスタイルです。前述した期待する「成果」「プロセス」や「態度」にこうしたスタイルを反映させることで、共通の期待が形成されていきます。

V(ヴィジョン)S(ストーリー)S(シナリオ)で考える

コーチングのゴールが決まったら著者は「VSSマネジメント」という手法を用いて現在からゴールまでの道筋を映画のようにストーリー化し、その裏側にあるシナリオを徹底的に考えていくという方法を推奨しています。

・V=ヴィジョン(到達したいゴールを描く)

・S=ストーリー(ゴールにたどり着くまでのプロセスをストーリー化する)

・S=シナリオ(ストーリー通りに運ぶための演出)

ヴィジョンとはゴールのこと先程の双方の期待です。

ストーリーは、そのゴールに至る道のり。物語に例えると失敗や挫折というような困難から、それを克服してゴールに至るというストーリーをあらかじめつくっておくということで困難を想定しておくことができます。

そしてシナリオは演出でそのような物語に出てくる困難に対してコーチがどのような役割を果たしていくのか、どんな準備をするのかという考え方です。

どんな場面においても、目標達成から遠ざかったり、失敗が続いたりすると、当事者は意気消沈して当然です。そうしたムードを払拭するためにどんな行動や言葉をかけてモチベーションを取り戻すのか?ということを事前に想定しておくことで、期待を叶えることができると主張しています。

まとめ

いかがでしたか?これまで述べてきたコーチングとの関連でいうと、やはりコミュニケーションや、信頼関係の構築ということの重要性が改めて感じられたのではないでしょうか?個人的には私も思ったようにいかないシーンでは正論をぶつけてしまう傾向があるので、今回の本を読んで改めなくてはと強く思いました。今回の内容に興味のある方は中竹さんの本や、コラムのバックナンバーをぜひ読んでみてください。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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