月刊ゴルフマネジメント連載#30 チームを育てる。最強のチームの作り方(2)

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

月刊ゴルフマネジメント(一季出版)→

第30回はのテーマは『チームを育てる。最強のチームの作り方(2)』です。

月刊ゴルフマネジメントに掲載された記事一覧は下記のリンクからご覧いただけます。

takashioya.com
monthly-golfmanagement | takashioya.com
monthly-golfmanagement | takashioya.comタグ「monthly-golfmanagement」の一覧ページです。

前回コラムでは優秀な個人が集まれば優秀なチームが出来るわけではないということや、チームのパフォーマンスを決定するのは「安全な環境=心理的安全性」であるということを述べてきました。

今回も『THE CULTURE CODE(カルチャーコード)最強チームをつくる方法』を参考にしながら、「チームを育てる」について書いていきます。

目次

チームのパフォーマンスを低下させる3つの妨害者

読者の皆さんが高いパフォーマンスが出せる良いチームを作ろうと思っていても、それを妨げる要因というのは幾つか存在します。おそらく多くの管理職の方が頭を悩ませるのは、「足を引っ張るメンバー」の存在ではないでしょうか?

この本の中でも「足を引っ張るメンバー」についての実験をしています。

いくつかのプロジェクトチームを組成して、同じテーマについて話し合いをしてもらいました。その中で各チームに安心な環境づくりを阻害する(妨害者)を入れてチームのパフォーマンスを測定するという実験を行った結果、以下の3つの行動がチームのパフォーマンスを著しく低下させることが分かりました。

攻撃的な言葉遣い

「バカ」「無能」「使えない」「考えが浅い」「レベルが低い」「時間の無駄」など、こうした攻撃的な言い方をする。期限や品質に対しての圧力をかける、無理無謀な要求をするなどの態度を取る。

怠惰な言動

会議に遅刻する、欠席する、やる気がないという趣旨の発言をする、非協力的、反抗的な態度を取る。

愚痴と文句

周りを暗くするような愚痴を言ったり、「話が長すぎる」「失敗したらどうするんですか?」「それ意味ありますか?」などの文句を言うなどの態度を取る。

またこうした行動は誘発性が高く、チーム内の他のメンバーにも波及してしまうことがこの実験から判明しています。結果的にこれらの行動を示すメンバーがいたチームは平均して30-40%チームのパフォーマンスを低下させることが分かりました。

ですからこうしたメンバーがいる場合は、例外なくいかにスキルが高くても即座に取り除く、あるいはこういう行動が目立つメンバーを最初からチームに入れないなどの工夫が必要だと著者は述べています。

一方で、限られた人数で構成させれた中小企業、とりわけゴルフ場のような組織ではメンバーを選ぶだけの選択肢がなかったり、あるいはメンバーをアサインするプロジェクトリーダー自身が攻撃的なパーソナリティを持った人であるケースもあります。

こうした場合はどのように対応すべきでしょうか?

中和行動の重要性

この実験からもう一つ分かったことは、妨害者を無効化する方法が存在したということです。チームに妨害者がいるにも関わらず、パフォーマンスが低下しなかったチームの特性として、「中和行動」をとるメンバーがいたことが判明しました。

「中和行動」とは妨害行動(妨害者が発する攻撃的、怠惰、愚痴などの言動)のあとに、例えば「僕はいいアイディアだと思いましたけどね」「実は私も前回遅刻しちゃって」「私も愚痴を言いたくなる時もありますが..」などユーモアを交えながら、その妨害行動によって空気が悪くなることを防ぎ、その後の発言を活発化させる行為を言います。別の言い方をすれば悪くなった空気をリセットする行動です。

実際の現場では組織というのはどうしても仕事ができる人(スキルが高い人)がプロジェクトメンバーに選ばれる傾向が高くなりますし、そうしたスキルが高い人というのは相対的に競争意識が強く攻撃的な人が多い傾向がありますから、こういう人がチームメンバーに含まれていないというケースはほとんどありません。ですから、チームメンバーに中和人材を入れることで、こうした妨害行動を無力化してパフォーマンスを出すという方法があることを知っておくと良いと思います。

ちなみに一般的にムードメーカーと言われるような中和行動が得意な人はSQ(Social Intelligence Quotient=社会的知性)が高いと言われており、愛嬌がある、笑顔で会話ができる、素直である(指摘や助言を受け止められる)、正義感が強く倫理的である、家族や仲間を大切にする、などの特徴があると言われています。このような存在は個人のパフォーマンスを見ると組織では目立たない存在かもしれませんが、チームに一人いるだけで、チームとしてのパフォーマンスの低下を防いでくれる貴重な人材です。

もし皆さんの組織でも思い当たる人材がいたら、様々な会議やプロジェクトチームに入れることでチームのパフォーマンスに大きく貢献できる可能性が高いので、あらためて皆さんの職場を注意深く観察してみてください。

ポポビッチから学ぶ帰属意識の重要性

テキサス州サンアントニオに本拠地を置くバスケットボールチーム「サンアントニオ・スパーズ」は17年連続で勝率6割以上を誇る常勝軍団ですが、そのコーチであるポポビッチはヘッドコーチとして通算勝利数で歴代単独トップ、大型補強などに頼らず、チームを常勝軍団へと育てるまさに名将です。

そんなポポビッチの激昂するシーンは有名で、選手やレフリーに対して激しく怒鳴っているシーンを良く見かけます。この一見するとよく怒るリーダーのもとでは心理的安全性が低いように感じてしまいますが、なぜポポビッチはこれだけのパフォーマンスを発揮することができるのでしょうか。

実はポポビッチはチームの「帰属意識」を非常に重視するリーダーであることでも知られています。

選手とはコートの外で夕食を一緒に食べたり、毎日一人ずつ全員に挨拶をしてまわり、家族の様子を聞き、ボディタッチを心がけ、そしてチームミーティングでは、毎回のように「ここにいる全員がチームの一員であり、このチームは特別で高いレベルが要求されていること、我々はその要求をクリアする力があると信じている」というコメントをします。

帰属意識を高める方法として①親密な交流 ②個人の尊重 ③物理的な距離 ④共通する目標の4つが重要だと言われていますが、ポポビッチはこれを忠実に実行している体現者でもあるのです。

私はこうした職場外での飲み会や雑談をグルーミング(毛繕い)と呼んでいますが、私たち人間がチームでパフォーマンスを発揮するためにはビジネスシーン以外でも関係性を深め、自分がそのチームやコミュニティの一員であることの自覚を深める時間が重要であることが分かっています。

安心な環境づくりがすべて

チームのパフォーマンスを向上させるためには、安全な環境が全てであり、その安全な環境を作るためのリーダーシップや、妨害行動の抑制、帰属意識の重要性について書いてきました。その内容はまさに「言うは易く行うは難し」ですが、私達にとって大切なことは、組織における問題を正しく理解して、それを改善できる方法を知っているということです。ぜひ現場で実践して改善を磨いていきましょう。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

目次
閉じる