ゴルフが上達しないのは「人は自分の能力を正確に評価することができない」からです。

ゴルフの上達のためには自分に合った練習の難易度や、クラブのスペックを選ぶ必要があります。

しかし実際には、プロがこの練習をやっているからとか、プロが使っているから、という理由でそのスイング理論や練習方法、クラブなどを真似ることで上達しようと思うことがあります。

もちろん、そこには憧れなどもあるのですが、なぜ私たちは本来必要な基礎的な練習ではなく、上級者やプロがやっているスイングに取り組んでしまうのでしょうか?

その最も大きな原因は「人は自分の能力を正確に評価することができない」ということが挙げられるのではないでしょうか?
あなたは自分の能力を適正に評価することができていますか?

目次

下手な人ほど自分の能力を過大評価してしまうという罠

人は自分の能力を正確に評価するのが下手だということがわかっています。

「ダニング=クルーガー効果」はデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーという2人の社会心理学博士によって2012年に調査された研究で、私たちはしばしば自分の能力を過大評価してしまうことを言います。

優越の錯覚を生み出す認知バイアスは、能力の高い人物の場合は外部(=他人)に対する過小評価に起因している一方で、能力の低い人物の場合は内部(=自身)に対する過大評価に起因していて、これまで行われた100以上の研究で、人々は自らの優位性を示し「自分は人よりも優れている」という判断を行うという結果が示されています。

なぜ人は自分の能力を過大に評価してしまうのか?

例えば、あるソフトウェア企業では、エンジニアらが自分自身の能力を評価するという調査が行われました。企業Aでは32%のエンジニアが自分たちの能力を「トップ5%」だと評価し、企業Bでは42%のエンジニアが自分自身を「トップ5%」だと評価しています。
さらにアメリカでは88%の車の運転手が「自分は平均以上の運転能力を持っている」と評価しているという結果も示されています。
これは私たちのような指導業に携わる人間にも言えることですが、多くのゴルフコーチは自分は他のゴルフコーチよりも優れていると思っているのです。

さらにこの研究で興味深いのは、能力がない人ほど自分の能力を過信する傾向になるということです。
特に能力や知識が乏しいうちは
・自身の能力が不足していることを認識できない
・自身の能力の不十分さの程度を認識できない
・他者の能力を正確に推定できない

という特徴があります。

実際に私もスノーボードをやっていますが、少し滑れるようになっただけで上級者向けの板を買ってしまいましたし、基礎的な滑りもできていないのに難しい技に挑戦してしまいます。
これがまさに「ダニング=クルーガー効果」で、スノボ初心者の私には、上級者の能力を適正に把握することは出来ないし、自分の評価でさえも正しくすることができないのです。

これと同じように、ゴルフがまだ未熟な初級者ほど、難しい理論に挑戦してしまって本来必要な基礎練習が十分にできなかったり、オーバースペックのクラブを使ってしまい本来のパフォーマンスが出せなくなる傾向になるということです。

熟達者の方が謙虚な理由

一方で、熟達者が自らの能力を過大評価することは少なくなります。
経験や専門的技術を積み重ねてきた者は、言い換えれば「知らない(出来ない)ことを十分に知っている」ということで、自分を過大評価しなくなります。

よく理想の人物像に備わっているパーソナリティとして「謙虚」という言葉が出てきますが、性格が謙虚ということよりも、それだけ何かを突き詰めてきた人物は、自分が出来ないことや知らないことを十分に理解しているので自ずと謙虚な姿勢が身に付くということなのかもしれません。

正しい評価はフィードバックと学習によって得られる

このように自分の能力というのは、自分自身で気づくことは難しいのです。
ゴルフのようにスコアやハンディキャップ、順位などで定量化されるものでさえも、多くの人が自分の技量を正しく評価することができません。

では、どうすれば正しい自己認識が行えるのでしょうか?
それは他者からのフィードバックを受けることです。
・自分に足りないことは何でしょうか?
・自分が成長するためには何が必要でしょうか?

というシンプルな問いは多くの成長のヒントを与えてくれます。

もちろんポジティブフィードバックによる自己肯定もモチベーション(動機付け)には必要ですが、まずは自らを正しく認識するということは更に必要です。

もう一つの方法はやはり学ぶことです。
物事を正しく認識する知識を身につけることで、誤った自己評価をすることが少なくなります。

賢人たちの教え

これまで述べてきたことは、様々な研究によって裏付けされていますが、実はこの事実は過去の賢人たちからも多く語られています。

孔子は 「真の知識は、自分の無知さを知ることである」と語っていますし、ソクラテスは「無知の知」について語り、シェイクスピアは「愚か者は自身を賢者だと思い込むが、賢者は自身が愚か者であることを知っている」と述べています。

ここから私たちが学ぶべきことは、上達するということは「知らない(出来ない)ことを知る」ということなのです。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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