ピンチはチャンスだ。

ちょっと不謹慎に思われるかもしれないが、今回の騒動はゴルフ業界が変わる良いきっかけになるかもしれない。
先日のSNSで「with コロナ時こそゴルフだ!」と投稿したが、これは冗談ではなく、他の娯楽に比べて圧倒的にゴルフは感染リスクが低いという優位性がある。これはゴルフ業界にとってチャンスだ。

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ゴルフ場のチャンス

日本のゴルフ場ビジネスはもともと経営に行き詰まっている。
日本のゴルファーは60歳以上が45%を占める高齢化市場だが、それは「時間がかかりすぎる」「お金がかかりすぎる」など若者世代や子育て世代へのゴルフの普及を拒む要素が多かったという理由があったからだ。

なぜ時間と金がかかるスポーツになったかというと、ゴルフ場というのは元々土地開発事業だったからだ。
山を切り崩してゴルフ場施設を作る、そのための債権を売るというのが日本のゴルフ発展の経緯だ。
一般的なゴルフ場運営母体企業の資本金は1000万円。当然1000万円では山を切り拓いてコースを作ることはできない。
会員権という債権(会員権は会員がゴルフ場から買い取っている債権でB/Sでは固定負債に計上されている)を発行し、得た資金でゴルフ場を建設する。バブル期は土地価格の高騰やゴルフ人気が重なりその債権が高騰、その付加価値として豪華なクラブハウスが日本中に建てられた。

バブルがはじけてプレー人口が縮小しプレー代が値下がりしていく中で、結果として豪華で大きなクラブハウスは光熱費や修繕費、更にレストラン、フロントなどの機能を維持するために多くの人的資源が必要となり、高いランニングコストの原因となっている。
当初のビジネスモデルが崩壊してから30年以上経過し、顧客ニーズが接待などの法人用途から、純粋にプレーを楽しむというニーズに変化した今でもそのオペレーションが変えられずにいる。
結果的にユーザーはゴルフ場のレストランで市場の2-3倍の値段のラーメンやカレーを強制的に食べさせられ、18ホールを消化するのに6時間もかかる、それでゴルフ場も利益がでないという、提供者も利用者も得しないオペレーションを生み出した。

これは利用者が債権者(メンバー)であるために、2000万の紙くず(紙くず)をつかまされた(←自己責任だけど)人にとっては、債権の価値が目減りした上に、その象徴であるクラブハウスも使えないとは何事か!という収益無視のカスハラ圧力、あるいは債務が返済できないゴルフ場からメンバーへの忖度があったからだ。
これが結果的に、付加価値にならないコストを膨らませ、ゴルフの魅力を失わせているというメカニズムだ。

ゴルフ場利用者の減少を分析すると、少子高齢化、接待需要が減少などが挙げられるが、日本の1990年の人口と2020年の人口はほぼ同じで構成比が変わっただけであり、ゴルファーを年代別で見ると30代以上で87%を占めるている市場であることを考えると、人口オーナスが原因というロジックは成立しない。
ゴルフ場産業衰退の本当の理由は「時代にあった顧客ニーズに応えられていない。」ということに尽きる。

しかし今回の影響でスループレーやハーフプレー需要、レストランで食事を取りたくない、お風呂も要らないというニーズは確実に増える。日本のゴルフ場はやっと会員権バブルが作り出した無駄なオペレーションを変えられる大義名分を得たのだ。
もちろんクラブハウスの利用を制限することでの従業員の雇用の問題などは残るが、本来あるべく付加価値の高い仕事を作り出すチャンスでもある。
今なら未来のゴルフ場を描くことができる。ピンチはチャンスだ。


スコットランドの名門プライベートコース「ミュアフィールド」がクラブハウスのクローズを決めた。コースは営業中。

ゴルフレッスンのチャンス

ゴルフ場に続いてゴルフレッスンも同じで、一般的にゴルフコーチの活動場所であるゴルフ練習場は商圏2kmビジネスと言われるくらい近所の人しか顧客にならないというのだったが、テレワークが普及したことでオンラインレッスンで全国に自分のサービスやノウハウを提供できるチャンスが増した。
実際にトライアルで実施したGEN-TENのオンラインセミナーは1週間で200名以上の申し込みがあった。これは場所という時空を超えて、ゴルフコーチが活動できるチャンスだ。

今回のテレワークの普及でユーザーがデジタルを使わざるを得ない状況が生まれた。
今後は5Gの活用も進みオンラインでのコミュニケーションに一気に社会が慣れていくだろう。
仕事や教育がどんどん遠隔でつながる。アフターコロナはそんな世界になる。

更にもう少しインサイトを掘り下げて見れば人間の「退屈」と「孤独」が増える。
意外と私たちは時間を無意識に消費しているので暇を感じないが、通勤や無駄な会議が減り、さらに自粛ムードで予定がキャンセルになると、時間を持て余す。読書やゲーム、ストリーミングビデオもいいが孤独だ。
やはりインタラクティブな娯楽の方が良いだろう。オンラインの価値がどこにあるかを見極める必要がある。

ゴルフは遠隔でもコーチング出来るし、ボールを打たないビデオ解析や、GEN-TENのようなセミナー形式でも良いかもしれない。
するとゴルフレッスンは労働生産から知的生産に変わる。

ゴルフレッスンの提供価値が変わる潮目になるかもしれない。
いや、近い将来で変わらなかったとしても、今できるのならやっておいた方がいい。
ピンチはチャンスだ。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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