月刊ゴルフマネジメント連載#31 チームが成長していく過程を示す「タックマンモデル」

ゴルフ界の総合経営誌『月刊ゴルフマネジメント』さんで、人材育成に関するコラムを連載させていただいております。

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第31回はのテーマは『チームが成長していく過程を示す「タックマンモデル」』です。

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前回前々回のコラムでは、「チームを育てる」ということについて書いてきましたが、今回も「個人」ではなく「組織」の育成について考えていきたいと思います。

組織を一致団結させたり、協働を促進するために、チームビルディングを重視する企業が増えています。会社は「個人」の集まりですが、単に人を集めただけでは組織は有効に機能しません。成果をあげる組織になるためには、メンバー同士が目的を理解し、協力関係を築きながら、成果を上げる行動が取れることが重要です。

チームビルディングの有名な理論として、集団力学理論の研究を行ったアメリカの心理学研究者のブルース・ウェイン・タックマンが提唱した「タックマンモデル」があります。

タックマンモデルは、チーム形成時から、チームが成果をあげられる状態になるまでを4段階(1977年に目的が達せられてチームが解散する「散会期」も加えて5段階になりました)に分けています。各段階をクリアしていくことで、チームが機能しはじめ、最高のパフォーマンスが発揮できるようになるという段階モデルで、多くのチームビルディングや組織開発の研修プログラムはこの理論をベースに作られていることが多いです。

目次

タックマンモデルとは?

タックマンモデルとは、組織形成やチームワークに関するさまざまな研究が進む現在でも最も重要なセオリーに位置づけられていて、1.) 形成期/Forming(フォーミング)、2.) 混乱期/Storming(ストーミング)、3.) 統一期/Norming(ノーミング)、4.) 機能期/Performing(パフォーミング)

、5.) 散会期/Adjourning(アジャーニング)という発達段階をたどりながらチームが成長していく過程を示しています。

1.) 形成期/Forming(フォーミング)

メンバーが招集された段階では、メンバーはお互いのことをよく知らない状態ですから、チームの共通目標や、メンバーそれぞれの役割も明確に定まっていない状態です。

見た目は和やかな雰囲気に見えていても、メンバー間で本音や本心を言い出せなかったり、お互いに遠慮があって自分の個性や強みや弱みを見せられません。

このフェーズ(段階)では、食事会やアクティビティなどカジュアルな雰囲気で、メンバーが自己開示やができるような環境を作って相互理解を促します。

2.) 混乱期/Storming(ストーミング)

チームが出来てある程度の時間が経過すると、チームの目的や目標に対する意見や認識の違いや、人間関係、具体的な業務の進め方についてギクシャクしたり、対立が生まれる状態です。

混乱期のチームの雰囲気は悪いように見えますが、チームとして成長していく過程でこうした混乱や対立、不協和は避けられない段階ですから、ここを乗り越えられるか否かがいいチームになっていけるかどうかの分かれ道とも言える重要な段階です。

この段階では、そもそもお互いに顔も見たくない、一緒に食事にも行きたくない、ゲームをしても楽しめないという状態なので、問題点を徹底的に議論する対話が重要になります。

チームメンバー全員が、このチームの目標達成や成果のために話し合う必要があるというマインドセットが出来るかどうかが鍵になるので、リーダーシップが求められます。

3.) 統一期/Norming(ノーミング)

チームのゴールや、各メンバーの能力や役割や特徴が共有され、統一感が生まれはじめる段階です。

会議の進め方や雰囲気も固まってきて、意見も活発に出てくる状態で、2.)の混乱期によく見られる「私は…」という自分を中心としたI表現から、「私達は…」「うちの会社は…」といったようなWe表現が見られるようになります。

統一期に気をつけたいのは2.)の混乱期に戻らないように、人間関係に配慮することです。プロジェクトが軌道に乗ってくると、フォーマルコミュニケーション(公式な業務連絡や情報共有や指示など)ばかりになってしまい、インフォーマルコミュニケーション(日常的な会話や雑談など何気ないやりとり)が減りがちです。

挨拶や雑談などは親和的関係を高める手段として有効ですから、いい雰囲気を維持するためにもこうした機会を積極的に取り入れていくことも大切です。

4.) 機能期/Performing(パフォーミング)

チームが一致団結し、結束力が高まり、動きに連動性も生まれます。メンバーがお互いにサポートできるようになり、チーム全体として最もパフォーマンスが発揮できるような状態です。

リーダーがいなくてもチームで合意形成や意思決定ができて、指示されなくても率先して行動できる状態です。

成功体験はもちろんのこと、ミスをフォローし合うことで、絆や信頼関係が深まり、組織への帰属意識も高まります。

おそらく多くの経営者やマネージャーが目指す理想の組織のゴールと言えます。

5.) 散会期/Adjourning(アジャーニング)

チームとしての目標が達成されたり、あるいは成功が日常になった時、メンバーには新たな思いや目標が生まれます。

特に不満はないけれども自らの成長のためにチームを離脱(退職)することを考えたり、新しい役割を求め始めます。

タックマンモデルの重要なポイント

ここまで読んでいただいた方は既にお気づきだと思いますが、メンバー同士が対立したり関係がギクシャクする混乱期や、力のある良いメンバーが次々と辞めていく散会期などは、リーダーやマネージャーからすると避けて通りたいと思うかもしれませんが、対立や衝突を恐れて、事なかれ主義でいては、活発な議論は生まれませんし、活発な議論なくして良い協力関係や団結も生まれません。

メンバーが本音を言い合える関係は、こうした意見がぶつかり合う経験を経てたどり着くのだというメッセージがタックマンモデルのキーメッセージです。

このセオリーをもとにチームビルディングを行う際には、まず自分のチームがどのフェーズにあるのかを見極めることが重要です。何年も一緒に仕事をしていて、表面的には仲良くしているように見えても、実はお互いのことを何も知らなかったり、チームの目標が共有されていない、フェーズ1の形成期で止まっているという職場も実際には多くありますし、職場や上司への不満が溜まったまま人間関係が対立し何年も対話をしていないフェーズ2で止まっている組織もあります。皆さんの組織はどうでしょうか?

最後に余談ですが、実は映画や物語で描かれるチームを主役にしたストーリーもこの段階で描かれることがほとんどなので、もし皆さんの好きな映画があればタックマンモデルが使われている様子を映画でも学んでみてください。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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