LIVがゴルフ界にもたらすのは繁栄か衰退か?バンコクで見た本当の姿。

10月7日から開催されたLIVゴルフ初のアジア大会。幸運にも公式配信メディアであるGOLF NET TVに同行する機会をいただき、バンコクのStone Hill Golf Clubに行ってきました。

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LIVアジア開催の意味

LIV Golfは2022年6月に初戦をロンドン(イギリス)で開催し、その後ポートランド(米国オレゴン州)、ベッドミンスター(米国ニュージャージー)、ボストン(米国マサチューセッツ州)、シカゴ(米国イリノイ州)と様々な物議の中でイベントを進め、2022年10月はじめて欧米以外での開催地としてバンコク(タイ)で開催されました。

アジアでの開催についてはすでにLIVゴルフとアジアンツアーでは戦略的提携が発表されており、LIVゴルフから3億ドル(約340億円)がアジアツアーに投資されることが決定しています。

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アジアンツアーの公式ウェブサイトのトップ画面にもLIVゴルフのアジア開催についての記事が掲載され、ツアーの勃興を図りたいアジアンツアー側と、LIVゴルフをグローバルに展開したいLIV側との相思相愛ぶりが伺えます。

https://asiantour.com/

今回のアジア開催はLIVのアジアでの存在感を高めるという戦略的意味があり、過去に例をみない世界のメジャー優勝者(トッププレイヤー)がタイに揃ったということでも大きな話題になっていました。

バンコクの市街でも多くのLIV GOLFの看板を目にした

独占企業PGAが生み出した均衡の破綻

PGA側からすると有名選手の流出に危機感をつのらせている今回のLIV騒動ですが、一方でPGAが世界のゴルフツアーで一強化したことで母国のスタープレイヤーがすべてPGAツアーに出稼ぎに行ってしまい、母国ツアーの人気が低迷しているという現状があります。

実際にアジアンツアーだけではなく、日本ツアーもスター選手が次々と米国に向かうことでスポンサー離れや人気の低迷が危惧されており、これは欧州やオセアニアでも同じ現象が起こっています。

もちろん高額な賞金や、歴史や権威、強いライバル達との戦いは、選手自身が求めていることであり、選手がそこを目指すこと自体は何ら問題はないものの、こうしたPGA一強による地域リーグの二軍化は、その地域から選手が輩出されにくくなってしまうという問題があり、これをよく思わない地域リーグのCEOがいることもまた必然です。

今回PGAがLIVに対して脅威をもっているのは、スター選手がPGAを離れてしまうことでPGAへの収入(放映権やスポンサー収入)が減ってしまうというPGAが築いた既得権を侵害される可能性があるからです。

実際に今回のLIVゴルフバンコクでは、フィル・ミケルソン、キャメロン・スミス、ダスティン・ジョンソン、ブライソン・デシャンボー、ブルックス・ケプカ、セルヒオ・ガルシア、マーティン・カイマー、ケビン・ナ、パトリック・リードら、トップ選手が出場する一方で、その翌週に日本で開催されるZOZO チャンピオンシップにはタイガー・ウッズや、ローリー・マキロイは不在で、選手の華やかさという点ではLIVに軍配があがっていることは明白です。

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LIVの登場はこうしたPGA一強独占だったゴルフ興行市場に健全な議論と競争を生み出し、ツアーを活性化するチャンスとも考えられます。
実際にPGAは選手流出を防止するため、新たなツアーや賞金制度の導入を検討するなど皮肉にもLIV登場によってPGAの待遇改善が期待される状況になってきました。
こうした状況になって当初はLIVに対して否定的だった選手も、徐々に態度を軟化させてきているように見えます。

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そうした意味で、LIVゴルフ=分断の象徴というヒール(悪役)の登場はPGAツアーにとってこそネガティブであるが、選手や消費者にとっては選択肢が増えたことにほかなりません。

もちろん一時的にはPGAツアーでタイガーとミケルソンの競演が見られなくなっている寂しさはあるものの、今後LIVあるいは、LIVが支援する下部ツアーでワールドランキングが獲得できれば、メジャー大会でPGAとLIVという2つのリーグのトップ選手が激突するというエキサイティングが試合が見れるようになるかもしれませんし、LIVの選手がポイント獲得のためにアライアンスを組む下部ツアーに出場することになれば、そのフィールドの獲得ポイントが上がるので必然的にPGAツアー以外のフィールドで戦う選手にもメジャー出場の可能性が高まります。

一方でLIVも潤沢な資金があるとはいえ、スポーツは社会活動としての重要な側面もあるため、お金の魅力だけでツアーを運営していけば拝金主義の汚名を拭えないままツアーの価値も低下してしまいます。
ツアーを支援する企業や団体との繋がりをもってしてはじめて社会に受け入れられたと言えますから、お金以上にLIVが目指すストーリーやビジョンを早期に確立して共感するスポンサー(支持)を獲得する必要があります。

ジュニア向けイベントの様子 (Photo by Jonathan Ferrey/LIV Golf/via Getty Images)

今回のバンコク大会も、これだけのメジャー選手がタイで一同に揃うのは初めてということで、多くのギャラリーが会場に訪れていましたし、少人数大会だからこそできるファンとの交流も、東南アジアでのゴルフの勃興に貢献したことは明白で、先進国中心だったゴルフの世界に新興国も巻き込んだゴルフの持続的発展に貢献していると言えます。
現在の選手への待遇や負担を軽減するアスリートセンタード(選手中心)の運営方法については、出場するアスリートからは大きな支持が得られているので、今後はツアーを通じた社会貢献やスポンサーベネフィットをどう構築するかに注目です。

LIVゴルフの今後

今回はじめてLIVの会場を見て感じたことは、LIVの会場はトーン&マナーも統一され、企業や大会のロゴを施したPGAの会場に比べても会場演出は高いレベルに感じました。
関係者に聞いたところ、PGAツアーなどの運営をサポートする企業が6週間前から会場の設営をしていたそうで、その気合の入れようが伝わります。

こうした会場の統一感を維持していく意味でも、スポンサーは大会ではなくチームに付随していくことも考えられます。

またLIVの特徴でもある3日間、予選カットなし、ショットガンスタート、チーム戦ボーナスなどの特徴も、厳格で伝統的なフォーマットのPGAトーナメントと比べて選手もリラックスしており、エキシビジョンのような雰囲気でした。

これらのことから、今後はLIVインビテーションをボーナスイベントとして頂点にして、すでに戦略的提携(投資)を発表しているアジアンツアーや中等のMENAツアーなどの下部ツアーのステータスを引き上げていく戦略も考えれます。

いずれにしても、LIVはゴルフ界に分断と混乱を生み出した悪者という見方がある一方で、少なくとも選手たちにとっては新たな選択肢と見る方が多いのではないでしょうか。今後もゴルフ産業の発展に繋がる健全な議論を期待します。

この記事を書いた人

ゴルフ活動家
ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、コーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。

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